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第70話 ボス猫の影②

バーだというのに、テラスの一角にもうけられた喫煙スペースには誰もいなかった リンが経営する飲食店でも、いまや喫煙所は無用の長物となっているところが多い 「もう一人呼んできてもいいか?例の探偵やってる俺のダチ」 今日、リンがマサトの結婚式を欠席したのには、それ相応の理由があった マサトに欠席のワケを話すと、探偵をやってる知り合いがいるからそいつを頼れと連絡先を教えてくれたのだ 何から話そうか頭の中で質問と説明の順番を組み立てていると、マサトが背の高い細身の男性を連れてきた 「隼敦人(はやぶさあつと)。うちのボーカル。仲間うちではアットって呼んでる」 「お名前は存じ上げております。副島臨(そえじまりん)と言います」 リンは右手を差し出した 「あんたが若きオーナーさんか。はじめまして。今日は本当は俺が行きたかったんだけど、代役でごめんな。さすがに親友の結婚式ははずしたくなくてね」 とマサトの肩に手を置いた 「いえ、お陰さまで助かりました」 まだ23歳だというのに、リンはいつからこんなに大人びた表情になってしまったのだろう 5年前、長谷川と共にいるところを初めて見かけたときは、まだひと目で高校生だとわかったのに 同じ歳のアヤメやエチゼンと比べても、桁違いに暗くて鋭い目をしている リンもマサトの結婚式には出たかったに違いない マサトにしても、リンには来てほしかった だが、リンは自分の立場と仕事を優先した なすべきことのためにしたいことを諦められる、大人を定義するなら、そういうところがあるかなしかの話なのかもしれない 「それで、お前の本当の義叔父(おじ)さんが出所してきたというのは…」 「おそらく本当です」 マサトは背中に冷や汗が流れていくのを感じた そして話は昨日に遡る

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