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第132話 秘密の会合①

「ただいま帰りましたー」 エチゼンが帰社すると、企画を考えた先輩が待っていたとばかりに声をかけた 「作者どうだった?知り合いなんだっけ?」 「はい。本人からはOKもらえそうです。なぜかエロゲだと思ってたけど」 「なんでたよ」 まさか自分の彼氏のせいだとは言えず、エチゼンは苦笑いした 「あとは出版社の方ですけど…」 「さっき連絡もらった。担当によれば、実写映画化やアニメ化の話が秒読みらしくて感触はよかったよ」 「企画練ります。アニメになれば、ビジュアル面を一から考えなくていいですし、声優使えればアニメのファン取り込めますしね」 エチゼンは、主人公の男と夜な夜な喪服姿で現れる妻の霊の声は誰がいいだろうかと妄想した ※※※※※※※※※※※※ リンはその日、鮭児に呼び出されて秋葉原の何でも屋の事務所にやって来た 「ハセの逮捕当時の足取りがつかめたので報告です」 「お願いします」 アットから話を聞いたせいで、リンは鮭児とどう接していいかわからなくなった 顔は強ばってないだろうか テンパッてとんでもないこと言ってないだろうか それに… アットとの関係は、バレていないだろうか ドキドキしながら鮭児の顔を見ていたが、特に変わった様子はなく、リンの方を特段見る気配もない 鮭児はリンの前に資料と写真を置いた 「これは?」 「紙が一番ってね」 リンは一番上に乗っていた写真を手に取った ハセが、女性の肩を抱いてホテルに入っていく写真だった 「それはここ最近のハセの動向。おまけみたいなものね。まあこれだけで、ハセの人となりや経済状況などある程度わかるわけだけど」 「ハセは女好き…」 「あと、わざわざホテルを使うということは、馴染みの女でもプライバシーを見せることを嫌う。時計からして金はありそう。まあ、金回りのことは君の方がよく知ってるか」 「いえ、俺は面識ないので…」 長谷川なら色々知ってるのだろうか あれから長谷川がどうなったかマサトも知らないらしく、自分からも連絡できないでいる (俺が義叔父だと思っていたのは、ハセじゃなくて、長谷川(あの人)ただ一人なんだけどな…) リンは長谷川と仲たがいしたことを少しずつ後悔していた 【猫の涙の色】は、妻が自殺したことで長い間会ってもらえなかった妻の両親から電話がかかってきたところから話が始まる 許された男は、墓参りを兼ねて妻の実家を訪れるのだが、そこで奇妙な事件に巻き込まれていく 物語は、義実家で飼っている猫の視点と主人公の男の視点が入り乱れる独特な文体で、読む者を奇妙な錯覚に陥らせる ※※※ 「というものなので、ゲームにおいては猫視点と人間視点を切り替えられるようにしようかと思っています。アイテムの共有やスペックは分けるので、例えば猫のときに知った情報を元に行動はできないし、人間のときに獲得したアイテムも猫のときは使えないというわけです」 「その2視点が、すべてタイミングよく終わりにできた時がエンディングってわけね」 「そうなります」 エチゼンは社内会議に臨んでいた 【猫の涙の色】のゲーム化が本格始動となったのだ 「切り替えは自分でできるの?」 「そこなんですが、私としては強制的の方が面白いと思っています。昼は人間、夜は猫みたいに」 「それによって難易度は変わる?」 「変わると思います。あと、任意と強制では恐怖度も変わってくるでしょう」 「だが妻の幽霊が現れるのは夜だけなんですよね?だとしたら、夜は男目線の方がよさそうですね」 「それも検討します」 エチゼンは担当クリエイターに目で合図を送り、タブレットに議題を書き込んだ 「次はアニメのキャラクターの使用に関してですが…」 ※※※ エチゼンは手応えを感じて会議室を出た 「お前の初めての独り立ち作品になりそうだな」 一緒に後片付けをしていた先輩が言った 彼は念のために脇に控えていてくれたが、一度も発言することはなかった 「作品に恵まれましたねー。素材がいいから企画たてやすいですし…」 「お前の知り合いの小説ってのも何かの縁かもな」 「ですね」 プッシールームでの人脈が、こんなところで活かされるとは思ってもいなかった (てか、あそこ、才能のるつぼなんじゃ…) タキだけではなく、九はモデルだし、コタローはVRアニメのクリエイターだ エチゼンは自分が情けなくなった

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