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第133話 秘密の会合②

その日もリンは秋葉原に来ていた 何でも屋の事務所に来るのも慣れたもので、リンは呼び出し鈴も鳴らさず、「こんちわー」と声だけかけてドアを開けた 事務所には先客がいた 「マサトさん?!」 「よお、リン」 こないだ会ったばかりだというのに、マサトの顔はげっそりと痩せていた 「病気でもしたんですか?」 「いや?なんで?」 「え、だってすごく痩せて…」 「そうか?」 本人は無自覚のようで、二の腕の肉をつまんでは離すを繰り返した その時、事務所の奥から鮭児が出てきた 「リンくん、ちょうどよかった」 「はい?」 「ハセの逮捕当時の動向。多分、マサト君が聞きたいこともわかると思うよ」 鮭児は二人の前に資料を置き、自分はホワイトボードに書き込みを入れた 「ことの発端は2016年3月19日。この日の夜、ハセの組織は詐欺と恐喝の現行犯で一斉逮捕されるわけだが、その時にその場にいなかった側近が二人いた。その二人がキーパーソンになっている」 鮭児はホワイトボードに日付と罪状を書き、ハセと一緒に逮捕されたとみられる数人の写真を張り付けた ハセだけでなく、他の人物も見たことのある者はいなかった 鮭児はそれらの人物をまとめて丸で囲むと『逮捕』と書いた そして、丸の外に2人の人物の写真を張り、左の写真に【芳賀(はが)】、右の写真に【長谷川】と書いた 「芳賀?」 リンの呟きを鮭児が拾った 「リン君の義叔母が所有してた店舗の半分は、この芳賀の管理下にあった。リン君は知らなかっただろ?」 「知らなかったです。確かに先日整理したときに、途中から【ハセ名義】になっていたものがあったんですが、その時は、ハセが相続したのかな?くらいにしか思いませんでした。それにその時は【ハセ】の正体は長谷川さんだと思っていたからー」 「特に気にしなかったんだね?」 リンはうなずいた マサトは資料とホワイトボードを見比べながら、 「この二人が、刑務所に入ったハセの代わりにもろもろ代行していたわけだな。わざわざハセの名前を語って」 「懲役は数年だし、出てきたときにシノギがないと困るからね」 鮭児がホワイトボードに矢印を書いた 金の移動を図式化したのだ リンは頃合いを見計らって、さっきから疑問に思っていたことを鮭児にぶつけた 「事業を任せられるくらいの側近なのに、なぜこの二人は逮捕を免れたんでしょうか?」 鮭児が、質問をしたリンではなくマサトを見た マサトが息を止めて鮭児を見た 「それが、マサト君の聞きたかったことだよね?」 マサトは深くうなずいて、そのまま顔を上げなかった

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