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第144話 別れの季節②

夜10時、玄関先 5センチ幅のドアの向こうをサラリーマンがコツコツという足音を立てて通りすぎていった 「んっ…んっ…!」 息をするのも忘れるくらい唇をむさぼった後、エチゼンは乱暴にヒヤを引き離した 「…ごめんっ!ごめんっ!ひどいこと言ってごめん!俺もヒヤが好きっ!本当は別れたくなんてないっ!」 あの日、プッシールームが入るビルの階段の踊り場で、爪を噛んでいる姿を見たときから、ずっとヒヤだけに恋してきた ギザギザのささくれだった指先はいまはきれいに整えられ、薄いピンク色のネイルが塗られている ギザギザの爪も好きだった ヒヤが戦ってきた証だから でもやっぱり傷ついてないヒヤがよかった エチゼンは、ヒヤの指から手の平、そして手首にキスをした 左手首を舐めると、盛り上がった傷が赤く染まった それは理性がふっ飛ぶ色だった エチゼンはヒヤを押し倒すと、服の中に手をいれて背中側に回した 「あっ…!」 ヒヤが背中をのけぞらせた 「コースケ!コースケ!」 のけぞった反動で、ヒヤがエチゼンの腰を両足で抱き抱えた 「ヒヤッ!」 「俺、もうコースケしか愛せないんだよう」 「俺も…」 「もう絶対浮気なんてしない!コースケだけいればいい!」 「俺ももうぜってーよそ見しな…ん?」 「…は?」 心臓と下半身に集中しかけていた熱が一瞬で引いていった

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