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第145話 別れの季節③

さっきまでの盛り上がりはなりをひそめ、二人向かい合って廊下に座っていた 「…で、浮気したの?」 エチゼンの問いかけにヒヤがむくれた 「浮気じゃないし…」 「じゃあなんだよ」 「セックスしただけだもん」 「はぁ?!それ浮気じゃん!」 「違うもん。好きなのはコースケだけだもん。セックスなんて歯磨きみたいなもんだよ」 「なんだよその理屈は!じゃあ好きでもないヤツと寝たのかよ?そっちの方がよっぽどやばいだろ?!」 「ひどーい!じゃあコースケはどうなわけ?そういう理論なら気持ちがもってかれそうになったコースケのがアウトじゃん!」 ぐぬぬぬ という唸り声が聞こえそうだった さっきまで、ドラマティックの極みとも言える、かなりハイレベルな会話をしていたはずに、今はただの痴話喧嘩と化している 「はぁ…じゃあ誰と何回ヤッたか言えよ」 「それ言う必要ある?1回も10回も同じじゃん」 「10回もヤッたの?!」 10回どころか30回以上だなんて、ヒヤの口からとても言えない エロ度で言えば、エチゼンとシた1年間より濃密な時間を壮馬と過ごした 【歯磨きみたいなもの】という表現は的を射ていると思う セックスなんてオキシトシン補充のための身体のケアみたいなもので、相手なんて誰でもいい ボーッとヤッていてもいつの間にか済んでいて、事後は歯磨き粉を流し終えた口内のように、すっきりさっぱりしている いつでも心と身体はバラバラで、相馬に抱かれていても現実味がなかった ヒヤの心と身体を繋げる線は、ゼンジに初めて抱かれた時に記憶と共に途中からぷっつりと切れた でもそんなこと、エチゼンは知るよしもない 「俺だって、本当はコースケを心と身体全部で感じたいよ!でもコースケは仕事が忙しくてなかなか相手してくれないし、それにダメなんだもん、コースケとは…コースケとヤルときだけはセックス中に冷静になるんだもん。好きなのに…好きだから辛いんだよ!」 ヒヤが膝の上で拳を握りしめた 「なんで…」 エチゼンは言いかけてやめた そんなことは、ヒヤの過去を考えれば容易に想像できる でも… 「でも、それがヒヤを苦しめているとしても、俺は他の男がヒヤに触るなんて絶対にイヤだ!」 「俺だってヤだ!」 「じゃあ頑張れ!」 「え?」  「二人で頑張ろう!俺らならできる!!」 エチゼンがヒヤの肩をつかんで揺すった

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