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第146話 恋の季節①
普通のエチゼンは普通の恋愛ができる
普通の会話ができる
普通に人を励ましたり助けたりできる
でも、その普通の人が持つ当たり前の力に何度も助けられてきた
「俺らなら…?」
「俺じゃ物足りないと思うけど…ってかだから他の人とモニャ…したんだろうけど、ヒヤが俺に集中できるように、俺も色々やってみるし…」
「…うんっ!」
ヒヤがエチゼンの肩に頭を委ねた
エチゼンの熱い息づかいを耳元で感じるのは久しぶりだった
「浮気相手は?きちんと別れられる?てか、俺の知ってるひと?」
「覚えてるかなあ?滋さんの結婚式で俺を口説いてきた戸田山壮馬 っていう…」
「え?あいつ?!ヒヤ嫌がってたじゃん!」
「そうなんだけど、あのあとエチゼンがトイレ言ってる間に連絡先渡されて、有名俳優だし、逆に変なことにはなんないだろーって軽い気持ちで…」
なんという尻軽だろう
エチゼンはあきれた
でも、自分ならためらうようなことを平然とやる破天荒なヒヤも好きなのだ
「本っ当に今回限りだからな?次やったらソッコーで別れるからな?」
エチゼンはヒヤの目を見て念を押した
するとヒヤはなぜか満面の笑顔で、
「うん!」
と答えた
エチゼンは、ヒヤのこの笑顔がたまらなく好きだったことを思い出した
「んっとにもうっ…」
エチゼンはヒヤを押し倒して初めて、そこが玄関先だったと気づいた
夜10時半、玄関先
また一人、5センチ幅のドアの向こうを通りすぎていく足音が聞こえた
先程の足音よりも高く、速く、尖った音は女性のヒールの音だ
ほんの1メートル、3歳児を横にしたくらいの距離のところを見知らぬひとが歩いている
たった1枚のドアを信頼して、エチゼンとヒヤは上半身裸になり唇をむさぼった
「ヒヤ、目、閉じて」
エチゼンがヒヤの前髪を掻き上げた
ヒヤは言われた通りにギュッと目を閉じた
エチゼンがその場を離れる気配がした
目を開けたかったがじっと待った
すぐに足音が戻ってきた
それから衣擦れの音
「…何?!」
瞼に柔らかいものが触れた
この匂いには覚えがある
柔軟剤の匂いだ
エチゼンの手がヒヤの後頭部に回され、ごそごそと何かをしている
「これで余分なものは何も見えないから、俺が触れるところだけに集中して」
巻かれたのはタオルのようだ
いつものエチゼンの声とは違い、低くかすれた声だった
戻ってきたのは本当にエチゼンなのだろうか
目が見えないと確認もできない
「コースケ」
ヒヤはそこにいるのが本物かどうか確認したくて、エチゼンの首に手を回した
「どーした?」
「なんか怖い」
「大丈夫」
温かく湿ったものがヒヤのモノを包み込んだ
「?!何?!」
「ひゅうひゅうひへ」
ヒヤはやっと自分がフェラをされているのだと気づいた
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