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第155話 三日月、猫たちの夜会③
「過去の殺人を告発して逮捕してもらうってのはいいけど、長谷川さんの目撃証言以外に何か証拠はあるの?」
鮭児が口を挟んだ
探偵らしい現実的な疑問だ
「当時はあった…いつ処分されていてもおかしくはないと思うがまだある可能性もある。あそこの部屋…華さんが住んでいた部屋にすべて置いてきたからー」
リンの脳内で、記憶と最近の出来事が繋がった
「上落合…」
リンの呟きに鮭児がピクリと反応した
「今のハセの家か…」
長谷川がリンの肩を揺さぶった
「お前はそこに行ったことがあるな?」
「あります…ある…」
リンは店員に紙とペンを借りると、間取りを書き始めた
「変わった家だったんです。1LDKなんですが、風呂が部屋の真ん中にあって…」
皆がリンの元に集まり、その手元に注目した
部屋は簡単に言えばロの字型だった
風呂とトイレを囲んでキッチン、リビング、寝室が配置されていて、トイレはリビングから、風呂には寝室から入る
台所に面した壁以外、風呂場はガラス張りで、リビングや寝室から中が丸見えなのだ
「元からこの間取り?なんかエッチーね」
鮭児が指摘した
「俺もよく知らないんですが、相当探したみたいです。継母は理想の間取りだとよく言ってました」
「そのガラス張りの風呂場は、目隠しできるの?」
タキが聞いた
「中にカーテンレールがあったんですが、取り外されてました」
マサトの心に黒い靄のような疑念が生まれた
そして、
「リンは泊まったことあるのか?」
と聞いた
「はい、2回ほど。継母は一緒に住むように勧めてくれましたが、俺はあの家は落ち着かなくて嫌いだったから…」
マサトの嫌な予感は的中した
でも、それが本当だとしたら、華がハセよりリンに遺産を残そうとした理由が納得のいくものになる
その時、マサトに視線を送る者がいた
タキだった
※※※
マサトの提案で一度休憩することにした
マサトはタキを誘って店の外に出た
「何か言いたげだな」
「まあ、あれだけ環境が整っていれば、みんな気づいたんじゃないですか?」
「どうだろうな」
「あなたこそ。風俗店の店長にはもったいないですよ。探偵の方が向いてるんじゃないですか?」
「長年敵のもとに潜入してた甲斐があったなあ」
ハハハと二人で笑った
そこへオークのドアが開いて、鮭児が顔を出した
「俺も入れて。そこの美人のお兄さん、3Pは好き?」
「ふふ。好きですよ」
タキに微笑まれて、鮭児はにやにやと笑った
マサトが鮭児のためにドアを開けた
鮭児は恭しくお辞儀をして外に出てくると、ドアが完全に閉まるのを待って、
「継母が実はショタコンで、自分を狙ってたなんて信じたくもないわな。あの間取りを探してくるあたり、バラすつもりはなかったとしても執念を感じるよ」
マサトとタキがうなずいた
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