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第2話 ハジメとスグル

「ふぅーっ、今日も祖父ちゃん厳しかったな。」 「ハジメには特に厳しい感じだ。」  終わると汗だくで道場に寝転んだ。子供の頃から、毎日学校から帰ると家の隣にある武道場で祖父の特訓を受ける。  学校の部活などやらせてもらえない。ここで数時間、祖父の気が済むまで剣術や体術を叩き込まれるのだ。  終わるとここを掃除する。広い板張りを並んで雑巾掛けする。その前に寝転んで大の字になるのは束の間の休憩だ。  高任家は時代錯誤だが、武士の末裔だ、という事に執着している。本家の跡取りに期待がかかる。今時流行らないが、祖父の言う事は、この家では絶対なのだ。  高校生になった。 「祖父ちゃんは、二言目には男、男、男らしくって言うけど、今は多様性の時代なんじゃねぇの?」 「ああ、毎日痣だらけってのは嫌だな。」  二人ともケンカは負け知らず。近隣で、二人に絡んでくる奴はいない。  でもスグルは静かに本を読んでいる方が好きだ。  ハジメは身体を使うことは好きだが、格闘技は性に合わない。筋トレの方が好きだ。  ハジメには、誰にも言えない悩みがあった。 スグルが好きなのだ。自分の気持ちに気付いたのはいつだったか。  あまりにも身近すぎる。 スグルにも人に言えない想いはあった。 でもその感情に向き合わない、目を背けて敢えて気付かないフリを、自分にも周りにも強いて来た。  普通はいとこ同士だって結婚出来る。一般的にはそうだ。しかしハジメとスグルは男同士なのだ。恋愛だってあり得ない。 (俺はハジメが好きだ。その身体に触れたい。)  妄想は膨らむ。  

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