6 / 74

第6話 上書き

「後から合流するよ。」 カラオケに行く連中にそう言ってハジメを追いかけた。  スグルにはわかる。ハジメは女の子が苦手なのだ。嫌がっているのがスグルだけにはわかってしまう。 (ハジメは困った時、オレを縋るような目で見て来る。子供の時からだ。) 「何よ、二人で何なの?」 「山井が待ってるよ。 恵美ちゃんをお持ち帰りしたいのは山井だ。」  後ろから山井がついて来ていた。 「わぁ、やだ。 山井、キモイよ。 私、帰る!」  タクシーを拾って帰ってしまった。 「俺たちはカラオケ行こうぜ。」 山井も一緒に、みんなと合流した。  カラオケはそこそこ盛り上がった。2時間ほど歌って騒いで、解散となった。  女子は行儀良く、連絡先を交換して4人で帰って行った。男たちも連絡先をゲットした事でホクホク顔で帰った。  ハジメとスグルもいつものようにハジメの部屋に帰って来た。 「俺、女は無理だ。」 しみじみつぶやくハジメの顔を見た。  「恵美ちゃんには悪いけど、すごく苦痛だった。」  慰めのつもりで熱い口づけをしてしまう。 スグルも欲を燻らせていた。何度も角度を変えながらキスを貪る。  お互いの昂りを見つけ、一緒に慣れた抜きあいをする。子供の頃からやっている事だ。  初めて精通した時から、時々、欲を吐き出す。 ゴムを付けて並んで射精した。 「はああ、生き返った。 気持ち悪かったんだ。 これで、嫌な感触も上書き出来た。」  恵美ちゃんに居酒屋のトイレでキスされたらしい。 「俺、女は無理だ。」

ともだちにシェアしよう!