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第7話 大学生
いつも二人、空気のようにそばにいた。
家も近く一緒に育った二人だったが敢えて大学は違う所を選んだ。
ハジメは筋肉を愛している。自分の性癖が、普通ではない事に気付いた時から、鍛える事で自分を律して来た。
身長188cm。長い髪をキリリと一つに結んでサムライのような美丈夫。
大学に入って、初めて男に抱かれて夢中になった。その男にまとわり付いた。
男はカッコつけてジェロニモなんて呼ばれていた。三つ年上。同じ大学の先輩だった。
常軌を逸した男だったから、恋愛には自由で男も女も受け入れていた。
ハジメは女性に何も感じない。男が好きかどうかなんて考えたことはなかった。男も女も知らない童貞だった。
高校時代には女子から随分告られたが、全部、素っ気なく断って終わった。
ハジメはジェロニモに夢中だった。地方都市の資産家の息子は、一人暮らしで,毎日好き放題だった。ハジメはジェロニモの部屋の掃除をしたり甲斐甲斐しい。
「ハジメ、また俺に抱かれたいの?
これから女が来るから、おまえ帰れよ。
それともそこで見てるか?」
ハジメは帰りたくない。抱いて欲しいのだ。可愛い仔犬のように、しっぽを巻いて待っている。
(屈辱的なのに、帰りたくない。
ジェロが好きなんだ。)
一途なハジメだった。
屈辱感に塗れて家に帰ると、スグルが来ていた。
「ひでぇ顔だな。どうした?」
相変わらずハジメの部屋で勝手に待っている。
部屋のベッドに倒れ込んで、隣に座っているスグルにもたれかかる。
子供の時から、いつもそばにいる、安心出来るただ一人の存在だった。
「スグル、おまえチェリー?」
「何それ?あ、童貞かって?」
いつも静かなスグルが自分を差し置いて、経験している筈はない、と思いながら訊いた。
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