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第11話 地獄を見ている
「大麻と麻薬は違うの?」
「大違いだ。
大麻はクワ科、麻薬はケシ科。
大麻はライトで麻薬はヘビー。」
これは後にサルベージされたNGOのマコチンから聞いた。
ハジメは大麻の後にはチョコレートをひとかけら食べる。大麻で敏感になった味覚が、最高に美味しく感じさせるのだ。
ジェロニモはほとんど物を食べなくなった。
「ジェロ、死んじゃうよ。
少し薬(ヤク)減らそうよ。」
そう言うと滅茶苦茶殴られる。そして正気に戻るとひたすら謝り続ける。その繰り返し。
「ハジメ、愛してるよ。」
二人で立派なジャンキーだ。
ジェロニモの顔を撫でる。痩せて人相が変わってしまっても、ハジメの愛した精悍な横顔は変わらない。瞳に熱がある。廃人じゃない。縋る思いで抱き付く。
「ハジメ、愛してるよ。こんな見知らぬ街で、おまえだけだ。生きるって何だろうな。
マントラからは何も聞こえない。真言のはずなのに。」
「ジェロ!寂しい言い方しないで。
俺も見たい。ジェロの見てるモノを。」
そうやって二人麻薬の沼にハマっていく。手に入る限りの薬を試してみる。
麻薬を買うために、街をうろついているといつも声をかけてくれる人がいる。
「やあ、だいぶ痩せたな。飯食えねぇんだろ。」
「薬が飯代わりか?」
何回か顔を見かけていると、マコチンとメドウズと名乗った。
NGOだと言うから無視していたが、不安が顔に出ていたのか、しつこく話しかけて来る。
ついに話をしてしまった。ジェロニモがまたしばらく帰って来ない。
「日本人だろ。」
「あんた達は?日本語上手いね。」
「ああ、俺はマコチンで通ってる。裏NGOだ。
こっちは俺の伴侶のメドウズ。黒人とハーフだけど日本国籍だ。」
「私たちは裏、だからね。
本人が望むなら、パクられないように国に帰してる。帰る手伝いをしてる。非合法な事ばかり手伝ってるから、構えなくていいよ。サルベージ。
日本人は薬にハマりがちだけど、取り返しがつかなくなる前に助けたいんだよ。」
ハジメは、もう俺たちは手遅れだなぁ、と感じたが、日本語で話せる事で、ほっとしたのも事実。
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