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第13話 フリークアウト

 LSDを2発、服用して錯乱したジェロニモはナイフで手と足の血管を切って、両目を潰した。  部屋中血の海だった。狂乱状態のジェロニモを止めることは出来ない。抱きしめる事も出来なかった。   チャラスでハジメも正気ではない。大麻がいくら幸福感を与えてくれると言っても目の前の地獄は現実を突きつける。 「ぎ、や、あ、!ぎゃあ! 助けて!ジェロを助けて! 誰か!だ、れ、か、あ!マコチン、メドウズ!」  ハジメの叫び声に隣の宿泊客が、NGOのマコチンを呼んでくれた。  気がつくと毛布を被って震えているハジメをメドウズが抱きしめてくれていた。  救急車で運ばれたジェロニモは、もう手遅れだ、死んでいるようだった、とマコチンが言った。マコチンの知り合いのインド人が3人来てハジメを何処かに運んだ。ハジメは一人では歩けなかった。マコチンが残り、警察の対応をした。ハジメが警官の尋問を受ける事はなかった。  そこで気絶したらしい。後で、よくそこまで意識を手放さなかった、とメドウズが褒めてくれた。  ハジメの存在をマコチンたちは警察から隠してくれた。その場にいなかった、と。  ジェロニモは麻薬で錯乱して自殺した、と言う事で終わった。  バッドトリップ、フリークアウト、言葉はたくさんある。日本人旅行者にはよくある事だという。一緒に暮らしていた恋人のハジメは、たまたま出かけていてその場にいなかった事になった。  全て裏NGOのマコチンたちのやり方,だった。 「警察沙汰になったら、強制退去、しばらくはパスポートも取れない。もう二度と入国出来ないかもしれない。将来に傷が付く。マコチンの配慮だよ。」  そして厳しい離脱療法が待っていた。 「ジェロニモの事を助けられなかった。 愛してたのに。愛してるなんて言えない。 俺は逃げたんだ。」  空っぽになってしまった。

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