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第14話 離脱
マコチンの離脱療法は過酷だった。身体から薬を抜く、生半可な事ではない。死んだ方がマシだと思えた。
そして様々な思いにとらわれた。
「ジェロニモには何が見えたんだろう。
大学にいた時は、ジェロの本質が見えなかった。
今でも見えていないけど、
あの頃がもう随分昔のように感じる。」
ハジメは、一人思う。ジェロの寂しさなんかわかろうとしなかった自分。
「あはは、寂しいって?
そんなわけないだろ。
セックスする相手は数多(あまた)いるのさ。」
そう言って笑うだろうか。
他の誰かを抱いていてもハジメを呼びつける。
そして目の前で愛し合う。屈辱的で辛いのに、その場を立ち去れない。
自分が抱かれている時の限りない優しさを知ってしまったから。
そう言えばジェロのセフレはみんな気のいい女だった。ハジメにも優しかった。
哀れみだっただろうか。ジェロは人たらしだ。
誰もジェロを憎まない。ハジメだけが恨み言を言ってしまう。もういないのに。
「俺は全部覚えてるよ。
ジェロの胸の温もりも、優しく愛撫してくれるその指も、口づけも。忘れられない。
俺の髪が好きだっていつも鼻を埋めてた。もう俺は一生髪を切らないでおこう、心に違った。
忘れられる訳がない。
俺を置いて先に逝った事を恨んでいるんだ。
死ぬなら、連れて行って欲しかった。」
薬が切れて禁断症状にのたうち回る時、ジェロの苦悩が垣間見える気がする。
苦悩なら分かち合いたかった。
時々、メドウズやマコチンと話をする。
「よくあるんだよ。
オーバードーズとか、、身体に合わなくてアナフィラキシーショックを起こして死んでしまう人がいる。本人も死ぬとは思ってなかったかもしれない。」
「無念だったらまた戻って来て欲しい。幽霊でもいいから。」
後始末と遺体の引き取りで、資産家のジェロニモの父親と弟が来た。弟はハジメと同い年だという。丸山城太郎、初めて知るジェロの本名。そういえばパスポートを見せなかった。
挨拶しようにも、酷く嫌われてしまったらしい。近くに行くことさえ出来ない。
日本で荼毘に伏す,と言う事でマコチンだけ挨拶しに行った。
葬儀は日本ですると言う。多分ハジメは墓参りなどもさせてもらえないのだろう。
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