18 / 74
第18話 会員制秘密倶楽部
支配人のような男が近づいて来た。
きちんとした黒服で、一部の隙もない身嗜みの美しい男。
「ご老人とご一緒でしたが、ここは初めてですね。ご説明させていただきます。」
一通りの説明を受けた。あの爺様は、体のいい客引きだったのか?
今は夕方の6時位か、もうすぐ夜になる。年齢を訊かれて二十歳だと答えると、お酒は召し上がりますか?と聞いてくる。
曖昧に答えているとシャンパングラスが運ばれてきた。
「本日はヴーヴクリコでございます。」
喉が渇いていたので飲み干して、お代わりまで貰ってしまった。
会員制秘密倶楽部。やはりここは店だった。看板も出ていない。会員制秘密倶楽部なのだから。
「俺、会員じゃないよ。」
「ご老人がお連れした時点で会員の資格をお持ちになった、という事でございます。」
「何だよ、それ。
俺の身元とか怪しいと思わないの?」
「大丈夫です。ご老人は人を見る目に長けていらっしゃいますから。
お名前だけ、頂戴してもよろしいですか?」
「高任一だ。」
「高任様、承知いたしました。
夜の営業が始まります。ごゆるりとお過ごしください。」
「あの、俺、今日は散歩の途中で、金とかあまり持ってないんだ。」
「大丈夫でございます。
ご老人がお連れしたので料金は頂きません。
何かお食事などはいかがでしょうか?」
「ああ、お任せします。簡単な物を。
あとシャンパーニュよりシェリーとか無いかな?カヴァでもいいよ。」
(少し図々しかったかな?
でも、一人で呑むのはツマラねぇな。)
ともだちにシェアしよう!