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第18話 会員制秘密倶楽部

 支配人のような男が近づいて来た。 きちんとした黒服で、一部の隙もない身嗜みの美しい男。 「ご老人とご一緒でしたが、ここは初めてですね。ご説明させていただきます。」  一通りの説明を受けた。あの爺様は、体のいい客引きだったのか?  今は夕方の6時位か、もうすぐ夜になる。年齢を訊かれて二十歳だと答えると、お酒は召し上がりますか?と聞いてくる。  曖昧に答えているとシャンパングラスが運ばれてきた。 「本日はヴーヴクリコでございます。」  喉が渇いていたので飲み干して、お代わりまで貰ってしまった。  会員制秘密倶楽部。やはりここは店だった。看板も出ていない。会員制秘密倶楽部なのだから。 「俺、会員じゃないよ。」 「ご老人がお連れした時点で会員の資格をお持ちになった、という事でございます。」 「何だよ、それ。 俺の身元とか怪しいと思わないの?」 「大丈夫です。ご老人は人を見る目に長けていらっしゃいますから。  お名前だけ、頂戴してもよろしいですか?」 「高任一だ。」 「高任様、承知いたしました。  夜の営業が始まります。ごゆるりとお過ごしください。」 「あの、俺、今日は散歩の途中で、金とかあまり持ってないんだ。」 「大丈夫でございます。 ご老人がお連れしたので料金は頂きません。  何かお食事などはいかがでしょうか?」 「ああ、お任せします。簡単な物を。  あとシャンパーニュよりシェリーとか無いかな?カヴァでもいいよ。」 (少し図々しかったかな? でも、一人で呑むのはツマラねぇな。)

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