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第25話 ロジャー
黒服が飛んでくる。お客様のようだ。外国人か、金髪碧眼の長身の男が、また同じように背の高いハンサムを連れて入って来た。それに有名モデルのユーツーも一緒だ。
「いらっしゃいませ、七尾様。」
背の高い金髪碧眼は七尾と言うらしい。後で訊いたら、デンマークとのハーフだと言う。常連だ。一緒に来た友人は、父親がイギリスとのハーフだから自分はクォーターだと言った。
「今夜は友人を案内して来たから、ご老人にお伝えしてくれ。」
奥のVIP席に案内された。
しばらくして奥から老人が出て来た。
「こんばんは。ご老人、紹介いたします。
こちらはロジャー・五十嵐・リチャーズ。
T大でこの若さで助教なんですよ。」
この時ロジャーは30才だった。
「初めまして、五十嵐です。」
「専門は何じゃの?」
「量子物理学をやっております。」
「それで七尾と知り合いなのじゃな。」
七尾はバーミンガムで宇宙工学をやっていたが、今は日本で関連機関と共同研究をしている。
(あの〇〇XAとか⁈)
もう一人綺麗な男は、人気モデルのユーツーだ。この頃ファッション誌で見ない時はない売れっ子だ。
「七尾とロジャー、ユーツーはどちらの恋人なんじゃ?」
老人の質問に
「今夜、どちらが落とせるか?
夜のお相手を、これから奪い合う所です。」
ロジャーが笑いながら応えると,老人はさも嬉しそうに
「負けた方には、誰か紹介するぞ。
遠慮なく言ってくれ。
ウチの黒服の鮫島なんかどうじゃ?」
黒服は鮫島と言うらしい。
「いい男!僕は彼がいいな。」
ユーツーが言い出した。
「おいおい、私をその気にさせてそれはないだろ。」
ロジャーはユーツーが気に入ったらしい。
「ああ、私の負けかな。
こんな絶望の積み重ねが人を大人にするんだ。
でもいい男が回って来た。ミスター鮫島、大歓迎だ。」
「七尾、諦めるのが早いね。」
「ま、今日はロジャーがユーツーを欲しがってたから、取り合うつもりはなかったよ。でもツーはモノじゃないから選ぶ権利があるぞ。」
ロジャーが不敵な笑みを浮かべている。
ユーツーの肩を抱いて、黒服の鮫島と話をしている七尾を見た。
「鮫島さんは勤務は何時まで?」
「小鉄さんが見えたのでいつでも上がれます。
でも、僕はプロ、ではありませんよ。」
男娼ではない、と言いたいのだろう。
「恋が始まるのにプロは関係ないよ。
私の事,好きかい?それとも誰か恋人がいるの?」
「いえ、今はシングルです。」
七尾が飛びついてキスした。
「じゃあ、2階に二部屋リザーブしてくれ。」
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