26 / 74
第26話 溺れる
ロジャーたちの分も部屋を確保してくれた。
それぞれ2階の客室に引き上げる。2階はホテルだ、設備は揃っている。
ラブホテルのような品のない華美な装飾はない。シンプルで居心地の良い部屋だ。
不釣り合いな大きなベッドがある。
「君とは初めてだね。私で良かったのかい?」
ソファに並んで腰掛けて優しく肩を抱き寄せた。
素直にもたれかかって来る。
「五十嵐先生の本、買いました。
この前出たでしょ。出版記念パーティで伺いました。」
「ああ、ありがとう。4冊目の私の著作だが、物理学に興味があるのかい?」
「全然。難しくて少し読んで置いてあります。」
「そして、放り投げた?
入門書があるよ。あれなら面白いだろう。」
ユーツーが両手を首に回して、抱きついてきたので、口づけした。キスを強請る顔が可愛い。
抱きついて中々積極的だ。
「君はゲイなのか?抱いていいの?」
この頃のロジャーは学問が主体だった。プレイボーイと言われるのはもっと後の事だ。
「先生はやめろよ。ロジャーでいいよ。」
ユーツーの細くて形のいい指がシャツのボタンを一つずつ外していく。その手を掴んで顔を見つめる。
「君は綺麗な目をしている。吸い込まれそうだ。
サファイアの瞳。濃い青、群青色?」
「ボク、ロジャーに一目惚れだったんだ。
いつも誰かを誘ってる訳じゃない。」
「七尾は?奴とは寝たの?」
うなづいたユーツーを力一杯、抱きしめた。
(この私が、ジェラシー⁈)
ともだちにシェアしよう!