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第34話 スグルの帰還

 スグルは数年スコットランド、アイラ島の蒸溜所で働いて、惜しまれながら、日本に帰って来た。 当初の計画通り麻布にバーを開くためだ。  バーを開くに当たり、渋谷のバーテンダースクールに通って必要な知識を学んだ。  本当は,2.3年、実際にバーで技術と接客を身につけるのが一番いいとは、思っている。  学校よりも現場の方が、勉強になるのはわかるのだが、その数年が待てなかった。  自分の店を持ちたい。  あの倶楽部に顔を出した。 「イギリスから、帰ってまいりました。 本格的なバーを開く準備をしています。」  老人は歓迎してくれた。 「おまえさんの祖父さま(じいさま)から頼まれておったからのう。」  驚くべきことを言った。 「俺の祖父ちゃんを知ってるんですか?」 「昔の知り合いじゃ。  もう鬼籍に入られたんじゃな。  店は、いい物件を紹介出来るぞ。」 老人はこの場所から程近い住宅地に、店舗を確保してくれていた。  あまり知られていないが、老人はこの辺り一帯の地主である。 「祖父様が、一番気にかけておったのはスグル、 おまえさんの事じゃった。  いつも甥のおまえを補欠扱いする長男に,跡取り選びは任せたが、次男の息子のおまえさんも、祖父様にとってはかわいい孫じゃったからのう。」  この土地に帰って来て、この土地で商売をする、と言うスグルの考えに喜んでくれた。    紹介された物件は スケルトン(空っぽで内装も何もない箱だけの状態の店。)の路面店(一階で道路に面している。)  全部一から自分でやれる、楽しい事だが時間と費用がかかる。  完全に生活拠点をこちらに移し、店の近くに部屋を借りた。スグルは知らないがマンションのオーナーもこの老人だった。

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