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第36話 ミカド

「キスが上手だから、いいよ抱かれてあげる。 2階に行く? それとも何処かに連れてってくれるの?」 「あ、今日は2階で。」  黒服を着たバーテンダーに部屋を一つ注文した。  手を繋いで階段を上がる。 (この人がハジメを虜にしたのか。 俺が抱いたって言ったらハジメ怒るだろうな。)  部屋に入ると肩に抱きついて来た。 「今日はフラれちゃって、身体が熱いままなの。 ハジメちゃん、じゃなかった、あなた、お名前は?」 「スグルです。ハジメは従兄弟だって。」 「そうなのね。混乱するわ。」  スグルはプロとしかやらないのを信条にしているが、ハジメと共有するのは複雑な気持ちだ。  それにさっきのピアノマン。彼もミカドの客なのか。  ベッドに倒れ込んで唇を貪る。スグルは久しぶりだった。  ミカドがきれいな指で服を脱がせる。 「わ、すごい筋肉。あなたも鍛えてるのね。」 そう言って胸に舌を這わせる。胸の突起を舌で吸って転がす。 「くすぐったいよ。おまえも見せろよ。」  服を脱がせながら身体を弄る。綺麗な背中から後ろに手を滑らせて尻を触る。  ピクッ。身体が震えて感じているようだ。 抱き寄せて脱げかかった肩に吸い付く。 「あ、あん、キスマーク付けて。」 「え、いいのか?」 「キスマーク付けてると喜ぶお客さんがいるのよ。他の男とやったんだなって自虐的に興奮するの。ボク、そういうキャラだから。  気に入れば、誰とでも、しちゃうの。」 (ああ、ハジメはこれに絡め取られたんだな。)  甘んじてコキュ(寝取られ男)になりたがる客もいるらしい。独占欲を裏切られて興奮するなんてかなり屈折した客だ。

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