39 / 74

第39話ミト

 そして運命のあの夜。 ハジメはミトを見つけた。  ロジャーの寵愛を独り占めして、ロジャーの自慢の恋人。ロジャーはみんなに見せつけたかった。着飾らせて侍らせる、恋人をそんな気持ちで連れて来た。  その手を離さないで。しっかり握っていなければ、誰かに盗られてしまうと言うのに、ロジャーは迂闊だった。  ユーツーが来ていた。懐かしい恋人。想いを断ち切れないまま別れた愛する人。  その口づけに我を忘れた。ミトから目を離してしまった。  ミトは世間知らずだ。ましてやここは普通の場所ではない。初めて来た倶楽部でロジャーの研究室の学生、尊に出会ったミトは、2階について行ってしまった。  『レイモンの部屋』と書かれたドアを開けると サディストの沼田レイモンがいた。  ボンデージのマッチョなレイモンは尊の恋人だった。並んで、初めての鞭を受けた。  恐怖に逃げ出したが人が多くて、ロジャーの所に戻れない。ロジャーは誰かとキスに夢中だし、尊はまだプレイの最中だ。  泣きそうな気持ちで入口の方を見ると、逞しい男が手を繋いで外に連れ出してくれた。  ハジメとの出会い。 「その先に俺の車が停めてある。」 「カッコいい車だね。」 「2ヶ月ほど空港の駐車場に停めっぱなしだったから、埃だらけだ。  さっき、日本に帰って来たんだ。 ドライブでもするかい?」 「うん、行きたい。」 (ロジに言わなくちゃ。でもロジは誰かとキスが忙しくて、僕の事忘れちゃったみたいだ。) 「何処に行こうか?ウチに来るか?」 「うん、遠いの?」 「残念だな、すぐそこだ。」  こうしてハジメの家に三日間居続けた。 三日目にロジが迎えに来た。どうしてわかったんだろう?

ともだちにシェアしよう!