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第47話 ミトとスサ

「スサって何才?」 「うん、ミトよりは年上だよ、多分。」 「ふぅーん、ずっと出雲にいるの? 他の所に住んだことはないの?」 「うん,なんて言ったらいいかな。 ずっと出雲から出なかったけど、 そう、イマジネーション。 心はいつでも、どこにでも、行けるんだ。  頭の中は世界を駆け巡る。」 「なんか質問の意味が違うんだけど。」 「そう、初めてお許しが出ておじいちゃんたちのところに来たんだ。」  納得できない答えだけど、それでもスサといると世界が違って見える。  ミトは手を繋ぐだけでドキドキする。 「スサって須佐之男命っていう名前なの?」 「そんなわけ無いだろ。稔彦(なるひこ)っていうんだ。」 「名字は?」 「うん、須佐だよ。スサナルヒコ、変な名前だろ。」  出雲の、ある一部の地域には、須佐之男伝説がある。須佐家は古い。 「同級生には八岐(やまた)って言うやつもいる。 大蛇(おろち)って言うやつもいるよ。  俺の天敵だっていつも笑ってた。 みんな親友だよ。」 (スサは自分の事を俺というようになった。ずっと堅苦しく私って言ってたのに。)  ミトは少し寂しくなった。ミトの知らないスサの歴史。ミトの知らない世界を持っている。    ハジメもタカという恋人が出来て随分になる。ミトは寂しかった。 (ロジに愛されているのに、寂しいなんて僕は欲張りだ。) 「出雲に行ってみたいな。」 「俺の所は出雲でも、中心街からは離れている。 有名な出雲大社とは違う神社が俺の家だ。  簡単に言うと大社と言うのは本店、俺の所は支店かな? 牧場もあって広いけど山の中だよ。」  あの老人たちは出雲大社にもいくけど、その神社に行くのも目的の一つなんだそうだ。 「やっぱりおじいちゃんたち、ただの旅行じゃなかったんだね。」 「俺、あんまり話しちゃいけなかったんだ。 奥義に関わる事だからね。」  スサの話は興味深い。 手を繋いで触れ合うのも楽しいけれど、今はお互いに、それ以上は望まない。

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