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第48話 ワイルド
「スサは恋人とかいるの?」
「うん、昔はいたみたいだ。
滅茶苦茶してた時期があって、乱暴者だった。荒ぶる魂。俺はひどい男だったらしい。あまり良く覚えていない。
兄弟姉妹たちには縁を切られている。」
「とんなひどい事したの?僕にもする?」
「ごめん、覚えていないんだ。
思い出そうとすると頭が割れそうになる。
罰を与えられて牧場の仕事しか出来なくなったらしい。自分の事なのに覚えてない。」
ミトは不思議な気がした。
「私から俺に言い方が変わったね。」
「ああ。俺って言う方がしっくり来る。
爺様たちに釘を刺されて、上品に喋れって言われてたけど、面倒だった。」
「スサはネコ被ってたんだね。」
「はは、ネコねぇ。そう、そう言う事。
俺は乱暴者らしいよ。」
「うふっ、気を付けよう。」
スサの手を握った。
ミトはちょっと乱暴にされたい、なんて思ってしまった。
昔々、大暴れして、みんなが困ってる奴をやっつけたらしい。
それから、寄ってくる女を手当たり次第に抱いた。男も抱いた。それで係累がたくさんいるって。スサには、たくさん子供がいるという。
「そんな事信じられない。都市伝説?」
「俺も全然覚えてないけど、確かに俺の子だ、っていうのが村には5.、6人いるよ。
みんなで育ててる。」
スサはミトの手を取って
「俺の正体がわかったかい?
俺はとんでもない田舎者で、女ったらしで、男にも手を出す、悪い奴なんだよ。」
「でも、覚えてないんでしょう?」
ミトは縋る思いで言った。
「スサ、僕の事、抱いて。」
「今まで我慢してたんだ。勘弁してくれ!
ミトを傷つけたくない。」
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