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第51話 出雲お社・奥の院
初めて出雲まで旅をした。毎年、奥のご老人はどうやってここに来るのか、何も教えてはくれなかった。全て、自分一人で調べなければならない。
スサの連絡先も知らない。教えてはもらえなかった。ただ、出雲、とだけ。
そもそもスサは、スマホもアドレスも持っていないのじゃないだろうか?
「行けば誰かが、教えてくれるじゃろう。
縁があれば会える。縁がなければ帰ってきなされ。」
老人は言った。ロジに頼るわけには行かない。
出雲大社駅に降りたった。大社はまだ先のようだ。須佐神社は、社の向こうに見える八雲山のさらに奥だと聞いていた。周りにも大小たくさんの神社が点在しているようだ。そして森ばかり。
出雲大社の裏の方へ歩いて行って、これはダメだ、と思った。
いくら歩いても距離は近くならない。有名な観光地でもある出雲だけれど、もの凄く広いのだ。
だんだん暗くなって来た。もう直ぐ夜になる。
駅に戻って泊まる所を探そうか。
微かに音がする。あまり聞き慣れない、馬の蹄の音?
パカラッパカラッ、漫画みたいな音。
「おーいおーい!」
「あ、スサの声だ。」
間違えるわけない,ずっと求めてた。
馬に乗ってスサが来た。
ミトは出雲の地に降り立った時から、何か、違う世界に来たような気がしていた。
本当ならこんな所で同じ時間に会えるわけがない。それに公道に馬って?
出来すぎている。心が通じたのか?
「スサ、神様が合わせてくれたの?」
ブルンッと馬が何か言った。
「怖い。馬って大きいんだね。」
「ミト、よく来たね。馬に乗った事あるかい?」
手を取ってスサの前に引っ張り上げられた。後ろからしっかり抱き止めてくれた。
「行くよ。
鞍の前に掴まるところがあるだろう。」
「ヒェッ高いね。落ちたら怖い。
僕、スポーツとか全然ダメなんだ。」
凄いスピードで山に入って行った。道らしい道はない。馬はよく知っているんだろう、慣れた様子で登って行く。
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