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第52話 須佐神社

 途中から怖くて目を瞑った。もう山は真っ暗だった。しばらく走って馬はゆっくり止まった。目を開けると平らで開けた場所だった。  お社が建っている。 「着いたよ。須佐神社だよ。奥の院だ。」  スサが抱き取って下ろしてくれた。馬はおとなしくていい子だった。 「ありがとう。」 馬の鼻面を撫でてやるとスサが 「初めての人に触られておとなしくしてるの、珍しいな。気が荒い子なんだ。 ミトは気に入られたね。」 「よしよし」 なんか厩のような所に馬を連れて行った。 「こっちだよ。ミトが泊まるところは厩の奥だ。」  曲り家のような古民家だ。入ってみると中は全然違う。今風のスマートな部屋だった。大きなソファが置いてある。 「ここは俺の部屋。離れになってる。俺はいつも馬と一緒。風呂もあるよ。必要な物は全部揃ってると思う。」  清潔な広いワンルームは都会的だった。 「あ、パソコンなんかある!」 「ミトはどんな田舎だと思ったの?  5Gだって入るよ。」 「おじいちゃん、メアド教えてくれれば良かったのに。」 「伯父様は、脅かすのが好きなんだ。 凄い山奥の田舎だと言われたんだろ。」  ミトが驚いたのは、スサがもの凄くかっこいいのと、思ってたのと違う都会っぽさ。 (ドキドキが止まらない。 そう言えば、スサは神職だと言ってたけど。) 「他に人はいないの?」 「いるよ。俺は女切らしたことないんだ。 いつも誰かが来てる。みんな俺の嫁になりたがってる。」 「嫌な言い方だね。 僕が聞いたのは、家族は一緒に住んでないのか?って事だよ。」  スサは慣れたようにミトの肩を抱いて来た。  「怒るなよ。今夜はミトと二人きりだよ。 腹減ったなぁ。冷蔵庫に何か用意してあると思う。」

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