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第57話 スサ

「宮司の稔彦さんって凄くモテるのよ。」 神社の境内を掃除していた白衣(びゃくえ)に緋袴(ひばかま)の巫女に言われた。境内には他にも、元気に走り回ってる子供達がいた。みんなスサの子供なのか?  昨夜、スサの家に泊まって、抱き潰されたことは、何故かここの人達に知られている気がする。 「なんか、もう帰りたい。」  厩に来た。ぶるっ,ぶるっ、馬の声がする。 「馬さん、僕はなんか、悲しい。」 馬の鼻面を撫でて話しかけた。 「馬さんの名前も知らないままだ。」 凄く寂しくなった。お尻も痛いし、情けない。 「僕は一人ぼっちだよ。」 スサが走って来た。ミトを抱きしめて 「妻がいる事で、そんなに傷つくと思わなかった。ごめんよ、許しておくれ。  今、俺が一番怖いのは、ミトに去られる事だ。 俺を嫌いにならないでくれ。」  スサがそんな事を言うなんて意外だった。 「結婚してるの、知らなかった。女の人の方が似合うね。僕は道化だ。こんなに遠くに来てしまった。」 「ミトにはここは地の果てに思えるんだね。 俺が全部悪い。  どうしたら、許してくれる? 何もかもどうでもいいんだ。ミトだけが欲しい。」 「何言ってるの?意味わかんない。 奥さんも子供もいるのに、浮気しちゃダメだよ。」  スサが何を考えているのか、ミトにはわからない。家族ってものが、よくわからなかった。 「でもなぜ結婚するのか? 最後にスサ、馬さんの名前を教えて。」 「馬は、アオ、だよ。  最後なんて言わないで。 もう一度、部屋に入って。」  肩を抱かれたのに、なぜか拒否してしまった。身体が嫌がっている。 「ここは不思議なところだね。 子供達はみんなスサのお子さん?」 涙が出て来た。泣くのは違う、と思っても涙が止まらなくなった。 (ロジ。助けて。ロジなら、全部解決してくれる。)

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