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第62話 倶楽部
行く時は一人で、不安もあり、長い道中だった。帰りはなんだか、呆気なかった。
まるで狐に摘まれたような、妖しい術にかかったような、誰も信じてくれないような経験だった。
「ロジャー、信じられる?
僕、ワープしたみたいに帰って来たんだ。」
ロジャーはミトをその胸に抱きながら、
「信じるよ。もう、3年も経ったんだよ。
信じない訳には行かない、何もかも。」
ミトはロジャーに抱きついて離れない。
奥の老人が来た。
「ミト、奥への旅はどうだったかの?
いい経験だったじゃろ。」
「僕は3年もいなかったって。
僕は何才になるの?こんな事があるの?」
「そうじゃな、失われた3年間じゃな。」
「ロジャー、僕の帰る家はまだある?」
「当たり前だ。私は研究に没頭して、一人で家を守ってたんだ。帰ろう、たくさん抱きしめたいぞ。」
「スサは?スサは何処へいくの?」
少し離れた所から声がした。
「ここにいるよ。伯父様がここで働けって。
しばらくここにいるよ。いつでもおいで。」
ミトは安心して帰る事にした。
久しぶりのロジの運転で、マイバッハで家に帰った。その間もずっとおしゃべりが止まらない。
家に帰っていつものソファに座って、ロジと深い口づけをした。
「あのね、スサって6人も子供がいるんだよ。
奥さんもいたし、奥さんじゃない人もいた。」
「私は研究がはかどったよ。でも、寂しかったぞ。お帰り、ミト。」
首に抱き付いた。
「僕には三日間しか経っていないんだ。」
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