65 / 74

第65話 みやげ話

 今夜は、「ミトが帰って来た」とミトとロジャーを知る常連が、その話題で持ちきりだ。  ミトとロジャーは、九十九里の先、北関東、海沿いの町に住んでいる。ロジャーの勤め先が、バーの近くの大学だった。そんな訳で常連客は皆、ミトとロジャーを知っているのだ。  また、知る人ぞ知る、あの倶楽部との繋がりも、ある。  出雲に旅して3年も経ってしまった。誰もが、一人残されたロジャーは、ミトと別れた、と思っていた。  元々プレイボーイで恋多きイケおじ、のロジャーには、誘惑も多かった。 「3年も放っておかれて、ロジャー捨てられたんじゃない?」 大方の意見だった。   でも、ハジメとタカ、スグルと礼於、尊とレイモン、ディアボラのメンバーや、「白薔薇」というファンクラブの仲間たちは、 「ミトちゃんとロジャーが、別れるなんてあり得ない!」 と、擁護してくれた。  ロジャーは溌剌として全く辛そうではなかった。 「ミトは少しばかり、時空のはざまで遊んでいるんだ。そのうち、帰って来るよ。」  みんなにいつもそう言っていた。 「ミト!」 「ミト、どこに行ってたの?」 帰って来てから、ミトとロジャーを知る人達から、余りにも同じ質問で、辟易している。 「だから、僕だって三年も経っているなんて、ビックリだよ。三日くらいの感じだった。  玉手箱を貰い忘れた浦島太郎みたいだ。 玉手箱があったら、僕、一気におじいさんになるのかなぁ?」 「ミト、面白すぎる。 ホントは素敵な人と浮気して、楽しんでたんじゃないの?」 「あ、そう、僕、恋をしたんだ。 でも、その人には奥さんがいたの。 子供なんか6人もいた。」 「ミトはなんか、嘘が下手だなぁ。」 勝手な想像をさせておく。

ともだちにシェアしよう!