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第65話 みやげ話
今夜は、「ミトが帰って来た」とミトとロジャーを知る常連が、その話題で持ちきりだ。
ミトとロジャーは、九十九里の先、北関東、海沿いの町に住んでいる。ロジャーの勤め先が、バーの近くの大学だった。そんな訳で常連客は皆、ミトとロジャーを知っているのだ。
また、知る人ぞ知る、あの倶楽部との繋がりも、ある。
出雲に旅して3年も経ってしまった。誰もが、一人残されたロジャーは、ミトと別れた、と思っていた。
元々プレイボーイで恋多きイケおじ、のロジャーには、誘惑も多かった。
「3年も放っておかれて、ロジャー捨てられたんじゃない?」
大方の意見だった。
でも、ハジメとタカ、スグルと礼於、尊とレイモン、ディアボラのメンバーや、「白薔薇」というファンクラブの仲間たちは、
「ミトちゃんとロジャーが、別れるなんてあり得ない!」
と、擁護してくれた。
ロジャーは溌剌として全く辛そうではなかった。
「ミトは少しばかり、時空のはざまで遊んでいるんだ。そのうち、帰って来るよ。」
みんなにいつもそう言っていた。
「ミト!」
「ミト、どこに行ってたの?」
帰って来てから、ミトとロジャーを知る人達から、余りにも同じ質問で、辟易している。
「だから、僕だって三年も経っているなんて、ビックリだよ。三日くらいの感じだった。
玉手箱を貰い忘れた浦島太郎みたいだ。
玉手箱があったら、僕、一気におじいさんになるのかなぁ?」
「ミト、面白すぎる。
ホントは素敵な人と浮気して、楽しんでたんじゃないの?」
「あ、そう、僕、恋をしたんだ。
でも、その人には奥さんがいたの。
子供なんか6人もいた。」
「ミトはなんか、嘘が下手だなぁ。」
勝手な想像をさせておく。
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