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第66話 時間の濃さ
あの倶楽部の会員たちは、新しく入った黒服のスサがミトの恋のお相手だと知っている。
ミトは隠さない。倶楽部に行くと真っ先にスサを探す。そして見つけると熱いキス。ロジャーも公認だ。
「いらっしゃいミト。
ロジャー先生もいらっしゃいませ。」
すっかり、黒服が板についたカッコいいスサ。
「スサ、僕寂しかったよ。
一緒に飲もう。ここに座って。」
ロジャーもどうぞ、と言っている。
「俺、仕事中だ。先生、ごゆっくりどうぞ。」
向こうへ行ってしまった。
ロジの首にぶら下がって上目遣いに見つめる。
「ロジ、怒る?
僕がスサを欲しくなったって言ったら。」
「怒るなぁ。とても怒る。浮気するな!って」
ロジが笑っている。
「ロジ、目が怒ってないよ。
じゃあ、3人で愛し合うのは?」
「スサくんが
嫌がるよ。やめておこう。」
この頃、時の長さは計測出来ない、という考え方が多くある。時計がある。共通の時間の長さ。
日常生活では、同じ量の時間が同じように流れて、共有している事になっている。そうでなければ社会の形が保てないから。
ミトとロジャーも2年間、イギリスに行っていた。客員教授としてバーミンガムに招聘されたのだ。
「あの時は、普通に時間が流れてた。」
ミトは思い出したように言う。
「あの時は、2年は2年に感じられたよ。
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