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第71話 裏社会

 世の中は相変わらず筋の通らない事ばかりだ。 拝金主義で成り立っている世の中は、醜い争いが尽きる事はない。  神代の昔から、地球上では、人は生きるために生命の奪い合いを強いられて来た。  狩猟採集の歴史。農耕になっても、小動物の生命は食糧だった。命を食らう。  その構造は今も変わっていない。  バー高任、に久しぶりに藤尾さんが来た。奥のご老人の仕事を引き受けて裏社会を治めている。  気軽な下駄履きで来るが、彼の決済がなければ この国ではあらゆるビジネスは出来ない。  面は割れていないが、裏ではその存在は知られている。いつもボディガードを兼ねて、元傭兵の深谷名都(ふかやめいと)が張り付いている。  心強い味方だが、今は藤尾集蔵の恋人でもある。藤尾集蔵を衆道に引き入れた同性愛者だ。夜の銀座でモテモテだった集蔵を虜にしたガタイのいいイケメンだ。  脱ぐと身体中傷だらけで、生半可な奴は、ビビって戦意を喪失する。  その筋肉の塊に抱かれて、強面の集蔵はネコになる。その閨房は二人の最重要機密だ。  普段は至って気さくな集蔵は、バーにもファンが多い。話しやすいのだ。  集蔵の親友で新宿桜会の佐倉組長も実は衆道である。若頭だった片桐竜治が、バシタ、姐、嫁、である。  たくさんの命が奪われた新宿抗争の後、しばらく懲役に行っていた。◯暴、との手打ちのように 佐倉組長が懲役に行く事で収めたのだ。  その後のチャイマの進出。仁義などない。新宿は今も狙いやすい人間の坩堝(るつぼ)だ。  収まっているわけではないだろう。

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