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諦めるしかない
「ルーファスさま。週末のパーティーの確認でございますが……」
「またか。もういい加減そっちで勝手にやってくれ。いちいち私の確認などいらないから好きにしてくれたらいい」
「ですがルーファスさま! ルーファスさまのご伴侶さまを探すためのパーティーなのですよ。私が勝手にするわけには参りません」
「私が良いと言っているのだからいいんだ。クリフ、お前の好きにしてくれて構わない」
「ですが……」
「どうせ今回も見つからないんだ。だからどうでもいい。私はそんなことより仕事に時間をかけたいのだ。クリフ、わかってくれ」
そういうとクリフは渋々ながら部屋を出て行った。
成人を迎えてから、王宮で頻繁にパーティーが行われるようになった。
その目的はもちろん全て私の伴侶を探すためのものだ。
最初は国内の貴族の女性たちが大広間に集められた。
煌びやかな衣装に身を包み、我こそが生涯の伴侶とでもいうように自信に満ち溢れた女性たちと、一人一人と挨拶を交わしたが、手のひらの指輪には何の変化もなく、そして私の心にもなんの変化もなかった。
生涯の伴侶には身分の制約がないとわかり、その後国内外の妙齢の女性を順番に王宮に招待したが誰一人指輪に変化を与えるようなものはいなかった。
生涯の伴侶は女性と決まったわけではないが、私の持つ指輪のサイズを見る限りおおよそ男には入らないサイズの指輪なのだそうだ。
確かに私の指に嵌めようとしても指の半分も入らない。
これほどまでに指の小さな男性など存在しないだろう。
しかし、クリフがもしかしたらと考え、国内外の男性も順次王宮に集めたものの、指輪も、そして私の心も女性の時と同様に変化が訪れることはなかった。
それから十五年。
私は三十になっていた。
この間にあれほど仲睦まじかった両親は事故で亡くなった。
この国に深い悲しみが訪れたが生涯の伴侶と死ぬときも一緒だったということは、ある意味幸せだったのかもしれない。
私は父上の亡き後、指輪のしきたりに従い、このリスティア王国の国王となった。
それでも未だ生涯の伴侶には巡り会えておらず、王妃の席は不在のままだ。
私はいつか出会える伴侶を思い、肌身離さず指輪を持ち歩いているが三十になりもはや諦めている。
この十五年の間、どれほどの女性、そして男性と顔を合わせただろう。
それでも誰一人指輪にも、そして私にも変化がなかったのだからもうどうしようもない。
執事のクリフだけは私の伴侶を見つけようと躍起になって、成人を迎えた者たちを対象に毎年大掛かりなパーティーを計画してくれているがもうどうでもいい。
この色鮮やかな指輪を嵌めてくれる人はきっとこの世のどこにもいないのだ。
色鮮やかで美しすぎるこの指輪は生まれた時からこの人生はひとりで過ごせという神の進言だったのかもしれない。
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