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ルーファスさんの気持ち

「我が国で王となるものは必ず美しい宝石のついた指輪を握りしめて生まれる。指輪を持って生まれるということが王の証だというわけだ。そして、この王家に伝わるしきたりで必ず守らなければいけないと言われていることが、その指輪がぴったりと嵌まるものを王の生涯の伴侶とすること。もし、その者以外を伴侶に選べば、この国に災いをもたらすと言われている」 「え――っ! 国に……災い?」 「ああ。それほど自分の持って生まれた指輪がぴったりと嵌まる者を見つけるということは重要なことなのだ」 そんな……。 僕の指にぴったりと嵌まった指輪がそんなにも重要な意味を持つなんて……。 自分の指に嵌められた燦々と輝く指輪が僕の心に重くのしかかる。 「でも、そうだとしたら……もし、僕が元の世界に帰ったら、ルーファスさんは……」 「死ぬまで一人で暮らすことになるだろうが……詳細はわからぬ」 「わからない?」 「リスティア王国建国以来、生涯の伴侶と夫婦とならなかった王は今まで一人もいないのだ。だから、私がもし、レンと夫夫になれなかったとしても、それから先未来はどうなるか予測がつかない。まぁ、それほど重要な意味を持つ相手だ。国に災いが起こるとまでは行かずとも、良い方向には行くことはないだろう。だが、この国のためにレンが犠牲になっていいという理由にはならない。元に戻る方法がわからない今、私のためにこんなところまで連れてこられてしまったレンには詫びることしかできない。レン……本当に申し訳ない」 「そんな……頭をあげてください」 僕なんかに一国の王が頭を下げるなんてあってはいけないことだ。 それに、もし……僕が元の世界に戻ったとして、その後この国に何か災いが起こるようなことがあればそれは僕のせいだ。 そのせいでこの国に住む多くの人たちがとんでもないことにあうなんて……それは嫌だ。 そもそもそんな重要な相手として連れてこられて、元の世界に戻るなんてこと自体、可能なんだろうか? この国が建国してどれくらい経っているかわかんないけど、もしかしたら僕みたいにどこかの世界から連れてこられた人もいるんじゃないのかな? それでもここの王さまと夫婦になったってことは、元に帰る方法なんて存在しないんじゃ……。 ルーファスさんは僕のために探してくれると言ったけれど、帰れないっていうことも覚悟しておかないといけないのかもしれないな。 さっきは突然言われて、少しパニックになってしまって泣いちゃったけど、ルーファスさんにも事情があるんだと思ったら僕の気持ちだけを押し付けるのは気が引けてきた。 でも……もう、家族に会えないのは辛すぎる。 その覚悟だけはまだできそうにない。 「レン……これだけは信じてほしい。私にとって、レンが生涯の伴侶ということに変わりはないが、レンに指輪がぴったりと嵌まったから伴侶にしたいわけではないのだ」 「えっ? それはどういう……?」 「あの湖で……レンと目があったあの時、身体中の血が沸き立つような今までに感じたことのない感覚を味わった。レンに出会ってこれが人を好きになるということなのだと初めてわかった。だから、私は生涯の伴侶だからというわけではなく、レン自身を心から好きになったから一緒にいたいのだ」 「ルーファスさん……」 すごく熱を帯びた目で優しく見つめられるとドキドキする。 「レン……レンは私のことを何か感じなかった?」 そう聞かれると困ってしまう。 あの時は驚きの方が大きくてほとんど覚えてないんだ。 でも、レナルドさんに嫉妬していた時のルーファスさんは可愛いと思ったし、抱きかかえられていた時はすごくドキドキした。 それに今もずっとドキドキしてる。 でも、これが人を好きになるってことなのかは僕にはわからない。 だって今まで誰かを好きになったことなんてないんだもん。 「ルーファスさんを見て、今もドキドキしてますけど……それが好きっていう気持ちなのかはわからなくて……」 「そうか……。いや、今はそれでいい」 「いいんですか?」 「ああ、これからレンが戻れるのかどうかも含めて、いろいろと調べなければいけないことがある。その間、この部屋で一緒に過ごしてもらおう」 「ここで一緒に? でも、国王さまのお部屋に僕がいたら迷惑じゃ……」 「迷惑なんてあるわけないだろう! そもそもレンは実際問題、私の指輪が嵌まった生涯の伴侶であることに間違いはないんだ。私の大事な伴侶を一人にさせるなんてことできるわけがない。レンは私のそばにいてもらう。これは決定事項だ」 「――っ!」 急にヒートアップしたルーファスさんに驚いていると、それに気付いたのか 「ああ、レン。大声をだして悪い、怖がらせたな。だが、それくらいレンのことを大事に思っているとわかって欲しかったのだ。許してくれるか?」 と慌てて僕を抱きしめてくれた。 一国の王さまが僕が少し怯えただけでこんなに焦って謝ってくれるなんて……さっきのクリフさんとか見たら驚くんだろうな。

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