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恥ずかしさを取り除くために

「あーっ、ゴホッ、ゴホッ。ルーファス、嬉しいのはわかるが、せめて俺が帰った後にしてくれ」 「ああ、わかった。わかった」 「それでなんで結婚式がひと月後なんだ? お前なら、今すぐにでも結婚式をあげたいと言い出すと思ったのに」 「ああ、イシュメルから言われたんだ。ひと月は解さないと身体を繋げるのは無理だとな……。結婚式を挙げたはいいが初夜に身体を繋げないわけにはいかないからな、レンの身体が整うまで結婚式自体を待とうと思ったんだ」 「あー、なるほど。確かに……レンくんの身体、小さいからな」 そう言いながら、レナルドさんが僕の身体を上から下まで眺めるように見つめるので、僕は恥ずかしくなって、抱きしめてくれているルーファスさんの身体にもっとピッタリとくっついて身体を隠そうとすると 「レナルド、レンをそんな目で見るな。レンが恥ずかしがってるだろう」 ルーファスさんがさっと上着を広げて僕を隠してくれてホッとした。 「ははっ。悪い、悪い。じゃあ、これからひと月かけて拡げるのか?」 「ああ、イシュメルからそのための薬ももらえるからな」 「お前、大丈夫なのか?」 「何が?」 「何がってわかるだろ? 暴走したりしないのかってことだよ」 「く――っ!」 レナルドさんの言葉にルーファスさんは一瞬言葉に詰まった。 「暴走って?」 「いや、レンは心配しなくていい。私は必ず自分を制御して見せるからな」 「??? よくわからないですけど……頑張ってくださいね」 意味はわからなかったけど、ルーファスさんの言葉になんだか熱い誓いのようなものが見えて、僕は応援してしまっていた。 「ははっ。レンくんに応援されたら頑張らないわけにはいかないな。ルーファス、頑張れよ」 「ああ、わかってる。お前はひと月後の結婚式が滞りなく迎えられるようにしっかりとクリフと打ち合わせをしておけ」 「ああ、任せておけ! レンくん……リスティアに留まることを決断してくれて本当にありがとう。ルーファスは次代の王だと厳しく育てられて、誰にも甘えることもなかったんだ。だけど、きっとレンくんには本当の自分を出すと思う。今のルーファスともしかしたら印象が変わるかもしれないが、呆れずに優しくしてあげてくれ」 「おい、レナルド! 余計なことを言うなっ!」 ずっとルーファスさんをそばで見ていたからこそ、わかるんだろうな。 やっぱりこういう関係って素敵。 「レナルドさん、僕に任せてください。ルーファスさんをいっぱい甘えさせて見せますから」 「そうか。頼もしいな。じゃあな、あとは二人でごゆっくり」 レナルドさんは満面の笑顔を見せながら、部屋を出ていった。 「レンっ! ありがとう」 「ルーファスさん……」 「さっきの言葉、嬉しかったよ。レン……これからいっぱい甘えさせてくれるか?」 「はい。もちろんです」 僕がにっこりと笑うと、ルーファスさんは嬉しそうに僕を抱きしめた。 しばらく経って、扉が叩かれた。 「イシュメルが薬を届けてくれたぞ。今日からこれを毎晩寝る前に飲むようにと言っていた」 「シロップですか? 錠剤じゃないんですね」 「ああ、こちらの錠剤は少し大きいからレンには飲みにくいだろうと言っていた。このシロップは甘いから飲みやすいと思うぞ」 「ありがとうございます」 お礼を言いながら、僕は子どもの時に飲んでいた風邪用のシロップを思い出していた。 やっぱりこの世界だと僕は子どもに見られているんだろうな……。 まぁ、身体が小さいからそう見られても仕方ないんだろうけど……。 一応、21歳なんだけどなぁ……。 「それから、これがレンの後孔を拡げる薬だ。これで毎日マッサージして柔らかく解していくからな」 あっ、そうだ……これがあったんだ。 これで、ルーファスさんにお尻の穴を拡げられるのか……。 ルーファスさんしか見てないから大丈夫だと言っていたけど……そのルーファスさんに見られることが恥ずかしいんだよね。 かといって、他の人はもっと嫌だし……。 自分では無理だって言われちゃったし……。 やっぱりルーファスさんに頼むしかないんだろうな……。 「レン? どうした?」 「いえ、やっぱりルーファスさんにやってもらうのは恥ずかしいなぁって」 「レンは何が恥ずかしい? その恥ずかしさを取り除く方法を考えてみようか」 「えっ……恥ずかしさを、取り除く……?」 「そうだ。マッサージをするときは心を落ち着けておくことも大事だからな。恥ずかしがっていたら、身体に余計な力が入ってうまく解れないだろう?」 「そう、ですね……。何が恥ずかしいって……」 自分の見えない場所をルーファスさんに見られて、触られることが恥ずかしい。 それに、そこを解すってことは……僕だけ下半身を丸出しってことだよね? せめて、上からタオルで隠して、こっそり手だけ入れてやってもらうとか? 逆に、ルーファスさんにも裸になってもらうとか? うーん、どっちも微妙かも……。 見えない状態でやっても解れてきてるとかわかるのかな? それにルーファスさんに裸になってもらったら……僕が目のやり場に困るというか……。 いや、興味がないわけでは全然ないけど……。 だって、ひと月後には僕のお尻に入れるモノだもんね。 見てみたい気はする……。 でも、そんなことより何より、まだ……僕たち……ちゃんと恋人になってないよね……。 ああっ! そうだよ! そこだ! だから、躊躇ってしまうんだ! 「レン、何かいい考えを思いついたのか?」 「えっ……ど、どうしてですか?」 「いや、なんだか嬉しそうな表情で私をみていたような気がしたんだが……」 「――っ、それは……」 「いい考えがあるなら教えてくれないか?」 いいのかな? 話してみても……。 「あの、じゃあ……その、ルーファスさん…………」 「んっ? どうした?」 「だから、その……ルーファスさんと、き、キスしたいなって……」 「――っ??」 僕がそう口にした途端、ルーファスさんの表情が一気に固まった。

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