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大事な従兄弟のために

<sideレナルド> ルーファスとレンくんを神殿に送り届け、無事に結婚の儀を終えられるように入り口で祈りを捧げる。 相変わらずここは不思議な空間だ。 私がルーファスをこの神殿に送り届けたのはこれで二度目。 前回は前国王・エルヴィスさまの逝去に伴い、ルーファスが国王となる戴冠の儀式を行った時だった。 あの日も私はこうして祈りを捧げていた。 ルーファスに伴侶が現れて、その伴侶とともにこのリスティア王国に平和をもたらしてくれるようにと。 あの日から数年。 ようやくこの場に再びルーファスを送り届けることができた。 きっと今頃、エルヴィスさまとクレアさまもお喜びになっていることだろう。 それにしても、ひと月後だと言われたその日のうちに、結婚の儀が翌日になると誰が想像しただろう。 ルーファスはそれについて詳細を教えてはくれなかったが、きっとレンくんが絡んでいるということは察せられた。 だから敢えて深く追及はしなかったがおそらくルーファスとレンくんの相性がよかったということなのだろうな。 それについては本当によかった。 ルーファスのモノは通常サイズを見たことがあるがかなりの大きさで、将来これを受け入れられる者が現れるのかと本気で心配になったものだ。 私もルーファスほどではないがそこそこの大きさがあり、オリビアは初めての時に怯えていたからな……。 そういえば、挿入した時も痛みを訴えていた。 あの時は自分のことに精一杯でオリビアを気遣う暇もなかったが、終わった後には破瓜の血がシーツについていたのを今でも覚えている。 私のでさえあんな状況になったのだから、クリフが血塗れのお包みを持っていた時に勘違いしても仕方がない。 結局あれは我慢に我慢を重ねたルーファスの鼻血だったわけだが、私はそれを聞いて感心したものだ。 ルーファスは私が思っている以上に、レンくんを大切に思っているようだ。 今頃、中では滞りなく儀式が進んでいるだろうか。 儀式を終え、無事に夫夫になった二人に会うのが楽しみだな。 儀式は小一時間程度だと聞いていたが、もうすでに2時間近く経とうとしている。 もしや、何かトラブルでも起こったのだろうか? だが、神殿には神殿長が許可した者以外入ることはできない決まりになっている。 だから私はどれだけ時間が経とうともここで待ち続けるしかないのだ。 ああ、無事に終えられるように……。 私は二人の素晴らしい未来をひたすら祈り続けた。 それからしばらくしてルーファスの気配を感じた気がして、様子を伺っていると神殿の入り口がゆっくりと開き、ルーファスの姿が見えた。 すぐ隣にはレンくんの姿も見える。 あれ? これはどういうことだ? 真っ白なはずの婚礼衣装がなんとも形容し難い色鮮やかな様相を見せている。 だが、それは驚くほど美しくそして二人によく似合っている。 特にレンくんの美しさは声にならないほどだ。 騎士団長という仕事柄、いつでも冷静に行動することを心がけているが、その私でさえ、二人の姿には驚きを隠すことができなかった。 驚いている私の目につづいて飛び込んできたのは、見たことのない男性と女性の姿。 神殿長に仕える神官たちか? いや、それにしては服装が違う。 だが、神官でもないものが神殿から出てくるわけがない。 一体誰なんだ? 恐る恐るルーファスに尋ねると、予想だにしない人物の名が告げられた。 「レンの両親だ。今日からこの世界で一緒に暮らすことになった」 はっ? 今、ルーファスはなんといった? レンの両親? レンの両親と言ったか? しかも、今日からこの世界で一緒に暮らすと? 「な――っ? えっ? はっ?」 予想を超える言葉に頭が混乱して何と言葉を返していいかもわからない。 そもそもレンくんは異世界からこのリスティアにきたはずだ。 だからこそ、元の世界に帰りたいと願っていただろう。 それなのに、レンくんの両親がここにいるのはなぜだ? しかもここで生活をすると? ああ、一体どういうことなんだ? 頭を抱える私の目の前でルーファスもレンくんも、そしてそのレンくんの両親とやらも楽しげに笑っている。 私だけが何もわかっていないことに段々と腹が立ってきて、公の場にも関わらず思わず叫んでしまった。 「ルーファス、一体どういうことなんだ? いい加減教えてくれ!」 「ははっ。お前がここで普段の口調を見せるとは……よほど驚いたようだな」 「あっ、失礼いたしました。陛下」 「ふふっ。まぁいい。とりあえずここではゆっくり話ができないから、応接室へ行こうか。ああ、クリフも同席させよう。呼んでくれ」 そう言ってルーファスはレンくんとその両親を連れ、応接室へ向かった。 私は慌てて部下にクリフを呼ぶように指示を出し、急いで後を追った。 我々が応接室に着くと同時にクリフが現れ、皆で中に入る。 レンくんの両親とやらが並んで席に着く。 正面からじっくり見ると、やはりよく似ている。 レンくんはどちらにも似ているが、特に母上に似ているようだな。 ということはあの二人がレンくんの両親だということは間違いないようだ。 レンくんの表情が明るいのもなんの憂いも無くなったからだろうな。 「先ほどレナルドにも少し話したが、ここに居られる方はレンのご両親だ。神がご両親の願いを叶え、レンの元に連れてきてくださったのだ」 「なんと……っ!」 クリフはあまりの驚きに身体を震わせている。 「私の伴侶となったレンの両親は、私の両親も同然。ここで一生安泰に暮らしてもらおうと思っていたのだが、お二人はどうやらそれを望んではいないようだ」 「えっ? それはどういうことでございますか?」 「お二人は仕事がしたいそうだ。だから、クリフとレナルドにはこれから二人の仕事の世話を頼みたい。住む家も城内で暮らしてもらってもいいし、王都に家を用意してもいい。二人の希望を聞いてやってくれ」 「承知いたしました。レンさまのお父上とお母上。私、この城で執事を任されておりますクリフと申します。どうぞ何なりとお申し付けください」 「あ、あのご丁寧にどうもありがとうございます。私は蓮の父で(みのる)。こちらは妻の弥生(やよい)と申します」 「ミノルさまとヤヨイさまでございますね」 「いや、さま付けなんて……なぁ」 「ええ。私たちにさまなんて……」 「いえ、そういうわけには参りませぬ。レンさまはこの国の王妃になられたのです。そのお父上とお母上にはそれ相応の対応が必要でございます」 クリフは相変わらずだな。 もう少し頭を柔らかくしても良いのだが……。 ルーファスとレンくんも苦笑いを浮かべている。 レンくんはともかく、ルーファスは早く話を終わらせて初夜に向かいたいのだろう。 大事な従兄弟のためだ。 私が助け舟を出してやるとするか。

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