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第9話
気が付くとそこはフカフカの布団の上だった……。
住職「目が覚めたんですね。大丈夫ですか?」
目に飛び込んできた人物に俺は驚いた。住職さん?あれ?俺って────…。
「俺って何で……」
住職「私がこの部屋に来た時には、貴方は倒れていたんですよ。覚えてませんか?」そう聞かれても全く覚えが無かった。
住職「まだ錯乱している様ですね。暫く安静にしてれば大丈夫でしょ。お腹は空いてませんか?良かったら身体に良い薬と小粥を用意してるので召し上がっては?」
気を使ってくれたのか住職さんはそう言ってくれる。俺はお言葉に甘えることにした。
「いただきます」
俺は素直に差し出された粥をたいらげたのだった……。食事と薬で少し体調が落ち着いた俺は、改めて住職さんと向き合う。
「すいません。ご迷惑をおかけして……」
住職「いえいえ。気にしないで下さい。」住職さんは人の良さそうな笑顔を浮かべた。
住職「ところで……貴方。何か不思議な体験はしませんでしたか?」唐突な質問に俺は首を傾げた。
「不思議な体験ですか?なんでまた?」
住職「覚えていないのなら良いんです。覚えていないなら…ね。」そう言って住職さんは意味ありげに微笑むのだった。
住職さんが部屋を去り一人になった俺は、先程の会話を思い出す。(不思議な体験ねぇ……)
俺は腕を組みながら考えてみたが思い当たる節は無かった。しかし、何故か寒気を感じるのは何故だろう?風邪でも引いたか?そう考えたが体調は悪くないのだ。
「まぁいいか……」どうせ俺が考えても分かりはしないのだから考えを放棄して眠ることにしたのだ……。
………。
頭が少しぼんやりしている……。まるで酒に酔っている時のように視界が定まらないのだ。
しかし、妙に頭が冴えている部分もある。その差がより一層俺を混乱させるのだ。
俺は一人布団の上で座り込みながら頭を抱えていた……すると襖が開く音が聞こえたのだ。
「起きてらしたのですね」部屋に入って来たのは黒髪の青年だった。どうやらこの寺の見習いらしいが、名前は確か……。
「さきさん。ああ……すみません。今さっき起きました」俺がそう答えるとさきさんは微笑んだ。
さき「そうですか……やっと起きましたか」
さきさんは微笑みながら言った。まるで俺が目覚めるのを待っていたかのようだ。
「それはどういう意味ですか?」俺が疑問に思ったことを尋ねると、さきさんの表情が変わった。まるで悪戯をする前の子供のように無邪気な笑顔だった。だがその瞳には情欲の炎が宿っているようにも見えた。俺は背筋がゾクッとする感覚に襲われる。
「さき…さん?」震える声で問うと。さきさんは虚ろな瞳でコチラをじっと見つめた。
「大丈夫です。優しくしますから……」と耳元で囁く。そしてその一言で俺は全てを理解してしまったのだ。そうだ……この人は俺を『抱ける』のだと、理解してしまったのである。
「待ってくれ!俺には好きな人が……!」咄嗟の噓を言い俺が慌てていると、さきさんは俺の股間に手を這わせてきた。その感触に思わず声が出てしまうと、さきさんは嬉しそうに笑いながら、「そんな人より私に溺れて下さい…」と言うと俺のズボンを脱がせようとしてきた。
抵抗しようとしたが体が上手く動かない……。
そして遂にパンツ一枚になってしまったのだ!恥ずかしくて顔を背けたが、彼女は俺の股間を撫でながらこう言ったのだ……。
「恥ずかしがらなくて良いんですよ?ここには私達しか居ませんから……」
その瞬間、俺達に差し掛かる黒い影に気づく。俺とさきさんは同時に振り向いた。するとそこには……。
住職「さき、少しおいたが過ぎますよ」
叱る様に言う住職さんが立っていたのだ。そんな俺の心情など露知らず住職は続けた。
「まあ気持ちは分かりますが、流石にやり過ぎですよ?」
すると住職さんは俺の方を向いて「申し訳ありません、うちのさきがとんだご迷惑をお掛けしました」そう言って頭を下げてきた。
(正直同性でなければ美味しかったのにな…)と思う反面、寺の見習いさんだしな。
「いえいえ、気にしないで下さい…」そう言うと住職は再びさきさんの方を向き「さて、とりあえず服を着なさい」と声を掛けるが、さきさんは虚ろな目で見るだけで一向に動かない。
「さきさん?」覗き込む様に顔を見るが、瞳に光を宿していなかった。(これって不味いのでは?)心配になり、俺は住職さんの方に顔を向けた。しかし、そんなさきさんを黙って見つめるだけで動く様子がない。(少し目が怖い気もした)
「住職さん?」俺の言葉を遮るように「さき、服を……」と再びかける。すると「……はい」さきさんはようやく小さな声で返事をすると立ち上がり、住職さんの元へ行き、乱れた服を整えてもらっていた。(……俺帰った方がいいのかな?)
そう思い住職に聞こうとしたが、それより先に住職さんが口を開いた。
住職「申し訳ないが、少々本堂の方でお待ち頂けるかな…」その言葉に俺は頷くと住職さんは別のお手伝いさんを呼んでくれた。俺はその人と本堂の方へ移動した。
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