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 レフィーナは剣を握り、手を震わせ、魔王の玉座にゆっくりと近づいた。自分が望んでいないことをやっていることに対して、レフィーナは罪悪感を抱き、ポロポロと涙を流す。  そんなレフィーナを見ても、魔王は終始無言で、ただじっと私を見つめた。レフィーナは魔王に剣を振りかざしたが、そのまま動かず、手を震わせる。 「――きない。わ、私には、出来ない、こんなこと……。わ、私は争いのない未来を望んでいるのに」 「聖女レフィーナは争いのない未来を望んでいるのだな。だとすれば、こうすればよい話だ」 「えっ――」  魔王が突然、レフィーナの手を握ってきて、何かと思えば、剣とともに勢いよく振り下ろすのだった。レフィーナはまるでスローモーションを見ているかのように、振り下ろされる剣の軌跡を目で追う。そして、漆黒に近い血が魔王から噴きあがり、自分の体や視界が赤黒く染まっていく。  膝から崩れ落ちた魔王は口から血を吐いた。レフィーナは絶望した表情をし、握っていた剣を手から滑り落とした。カランカランと金属音がしたと思えば、ティルヴィングは塵となって鞘とともに消失した。 「う、嘘でしょ……」 「ティルヴィングが消失したということは最後だったって事か。まぁ、俺が二回使っちゃったからねぇ」  レフィーナの背後で勇者たちが面白い見物を見たかのように高笑いする。レフィーナはその汚い笑い声で我に返り、流血している魔王に寄り添い、勇者たちを睨んだ。 「ゆ、許さない……。こんなことをして、誰が喜ぶっていうの!」 「誰が喜ぶ? あはははっ! 聖女様ってどこまで頭が悪いのかな? そんなの、俺らに決まってんじゃん。――さ、王都に帰還して、国王へ報告だな。『国王に言われた通り、魔王を討伐しました』ってね」 「不戦条約なんて、最初から嘘だったのね! 国王様まで裏切るなんて、信じられない!」  レフィーナが怒り悲しんでいると、勇者が後ろにいた仲間のうちの一人である魔術師の肩を叩いた。そして、魔術師は杖を構え、詠唱し始めた。 「……そ、その詠唱は……一体、なに? 貴方たち、何をする気なの!」 「くくっ、何をするって? それは決まってるでしょ。 破滅を呼ぶ聖女なんて、この世にはいらないでしょ?」 「勇者様は私の命まで奪う気なの!」 「へ? ――あはははっ! 命を奪う? 何言ってんの? それだと面白くないでしょ? こうするのさ!」  次の瞬間、レフィーナと魔王の足元に巨大な藍色の魔法陣が展開された。そして、魔法円に沿って、ガラス状の結晶壁が展開され、二人を閉じ込めるようにドーム状となった。  レフィーナはその結晶壁に駆け寄り、ドンドンと拳で強く叩いたが、びくともせず。次は体当たりをしてみたが、結果は同じだった。その様子を外側から見ていた勇者たちはレフィーナを指差しながら、甲高い声で嘲笑った。

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