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 ストラスはメフィストを軽蔑の眼差しを向けた。メフィストはすぐさま訂正した。 「違う違う! 表現だよ、表現。お前も詩集読むだろ?」 「そんな人肉を喰らうような詩人の詩集など読まん」 「そんな引くなよ。俺の表現力が悪かったし、遠回しに言い過ぎた。お前に言ったら、怒られそうだし……」 「なんだ、言ってみろ。私が怒った事は一度しか無いだろう」  メフィストは眉間に皺を寄せながら、腕組みしたり、頭を掻いたりして、思い悩んだ。しかし、ストラスが手元にあるワイングラスを奪い、「早く話せ」と急かすため、メフィストは深いため息をつき、ストラスからワイングラスを奪い取り、ワインをグイッと飲んだ。 「子供とまぐわう場所があんだよ。そこで、苺っていう名の可愛い人族の男の裸を楽しんだんだよ。勘違いするなよ。最後まではしてない。というか、させてもらえなかった」  メフィストが苦笑いしながら、ストラスの方を見ると、ストラスはワイングラスを持つ手を震わせ、俯いていた。メフィストは恐る恐るストラスの顔色を窺おうと顔を覗くと、凄い剣幕だった。そして、次の瞬間、蝋燭の灯りが一気に消え、ワイングラスが破裂するように割れ、食堂の窓ガラスも粉々に割れ、ガラス片が勢いよく外へ飛散した。 「お、お前は……恥を知れっ!」 「オブラートに包みまくって話したのに。なんで怒るかな? 俺、悪くないよ? お前が急かすから、そのままを言っただけだぞ。あーぁ、オルトロスが怯えて、漏らしてんじゃん」  メフィストは顔を真っ赤にして憤怒するストラスを無視して、怯えているオルトロスを手招きし、自分の膝の上に乗せ、頭を撫で、あやした。 「おい、話を逸らすな! あれ程言ったよな? 私の前で卑猥な話はするなと!」 「はいはい。ストラス様、申し訳ございませんでしたぁ。っーか、俺からも一言言わせてもらっていい?」  メフィストはテーブルに勢いよく両手をつき、立ち上がり、睨みつけてくるストラスを軽くあしらった。 「な、なんだ。言ってみろ」 「お前さ、何年前だっけ? 何十……あぁっ! そんなんどうでもいいわ。いつまで引きずってんだよ。たかが捕虜にした聖女に『私をいたぶって、その穢らわしいモノで……わ、私を滅茶苦茶になさるのですか! な、なんて下劣な!』って言われた位でさ――」 「お前には分からないだろうな! あと、話を盛り過ぎだ! あと、聖女の声は美しかったぞ。あの時はたまたま鉄格子の扉に服が引っかかって、ズボンが脱げただけであってだな!」 「はいはい。それはもう何千回も聞きました。拗らせ過ぎだよ。だから、気分転換に男遊びでもどうかなってさ。苺は本当に女みたいに可愛かったし、初々しかったぞ」  メフィストはニヤつきながら、ストラスを横目で見た。ストラスは舌打ちをし、ドカッと椅子に座り直した。そして、頬杖をつき、不貞腐れながら、指を鳴らし、割れた窓ガラスなどを魔法で修復した。

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