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「何か不都合がありましたら、なんなりとお申し付け下さいませ」 「あぁ、分かった。説明感謝する」 「では、最初にお体を清めるために、風呂場にご案内いたします」  ストラスは苺の案内で風呂場へ向かう。そして、苺がストラスの服を脱がそうとしたが、やんわり断った。 「大丈夫だ。自分で服ぐらい脱げる。あの椅子の場所で体を洗って、湯船に浸かればいいんだよな?」 「は、はい……」  苺が不安になっているのも露知らず、ストラスは竹籠に脱いだ服を入れると、そそくさと椅子の方へ行き、湯船から湯を汲むと、石鹸を泡立て、自身の体を洗い始めた。  ストラスが体を洗っていると、苺が慌てて、着ているものを全て脱ぎ、小走りで駆け寄ってきた。  ストラスが正面の鏡に目をやると、全裸の苺が声をかけたそうに見ており、苺の方を咄嗟に振り返る。それに驚いたのか、苺は体をビクッとさせる。 「すまん。驚かせてしまって。しかし、何故、苺も裸なんだ? お前も体を洗うのか? だったら、もう少しで終わるか――」 「いえ! 本来は苺がストラス様のお体を洗わせて頂くのですが……」 「なんだ、ここにくる客はまともに自分で体も洗えんのか」 「いえ、そうではなく……。そ、そういう場ですので……」 「男娼というものは大変なのだな。しかし、苺の仕事を全て取り上げるのも良くないか。……では、背中を流してくれないか?」 「は、はい! お背中を流させていただきます」  苺が石鹸で丁寧に泡を作り、ストラスの背中に手を添える。そして、自身の体を密着させ、体を大きく上下していた。  最初は何をしているのかと疑問に思ったが、ここは苺に任せようと思い、黙ったままでいた。 「ストラス様のお体はとても素晴らしいですね。苺は生まれつき体が小さいので、憧れます」 「そ、そうか? 私の体は魔界の中でも小さい方だぞ」 「そうなのですか? ストラス様のお背中からはとてもそうとは思えない偉大さが伝わってきます」 「苺はお世辞も上手だな。そういう教えを受けているのか?」 「いえ、滅相もありません! 苺が感じた事を述べただけです。確かに、教えは受けてますけど、今のは苺が本当に思った事をお伝えしただけです」 「そうか」 「あの、お背中流しますね。桶をお借りしてよろしいですか?」  苺に言われた通り、ストラスは桶を苺へ渡した。そして、ストラスの体に着いた泡を洗い流した後に、自分の体も洗い流していた。 「では、湯船の方に……」  苺の案内でストラスは湯船に浸かり、深いため息をつき、肩の力を抜いた。湯加減が丁度良く、落ち着く。 「たしか露天風呂というものだよな? 生まれて始めて入ったが、こんなにも気持ちが良いものなのだな」 「はい、皆様そうおっしゃいます。とても癒やされると。温泉には天然温泉と人工温泉がありまして――」  苺は湯船の外で跪き、温泉の話をし始めた。ストラスは何故、苺は湯船に浸からないのかと不思議に思った。 「おい」 「はい? あっ、すみません。ここの湯は当然ながら、人工温泉で――」 「それはいい。それよりもお前も湯船に浸からないのか? そのままだと風邪を引いてしまうぞ」 「……入ってもよろしいんですか?」 「あぁ、苺が風邪を引いてしまったら、皆が心配するだろう? それとも、客が命令しない限り、入ってはいけないものなのか?」 「お客様の中でもお一人で入りたいとおっしゃる――」 「そんな説明は湯船に浸かってから聞く」

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