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「は、はい……。前回、メフィスト様がいらっしゃった時に、苺が本番に対して、恐怖心があるとお伝えしたら、ストラス様を連れてくるからと。ストラス様なら苺の恐怖心を取り除く位、気持ち良くして下さると仰ってて……。でも、メフィスト様のように、苺の体に触ったり、そ、その……、そういう事をされないから、なんでだろう? と思いまして。あ、あと! 苺は極上の男娼ではございません。そのような名誉ある男娼ではありません」
ストラスは苺の話を聞いて、額に手を当て、深くため息をついた。ストラスの様子を見て、苺はどぎまぎしていた。
「すまん。あとであいつを締めないとだな……。私達はまんまとあいつの口車に乗せられたんだ」
「口車に、ですか?」
「そうだ。苺はまぐわいに対する恐怖心があると言ったろ? 私にも恐怖心というか、悩み事がある。あまり人様には言えんが……」
「言えない悩みなら、無理して仰らなくても構いません。苺はお客様を満足させるのがお仕事ですので、お客様には無理をさせたくありませんから」
肩を落とすストラスに苺が近寄り、両手でストラスの手を優しく握った。ストラスは覚悟を決めたように、顔を上げ、苺の両肩に手を置き、真剣な表情で苺を見つめた。
「私は勃たないんだ」
「えっ?」
当然ながら、苺はポカンとした表情をしていた。ストラスは頬を赤くし、目を泳がした。苺は言われた瞬間、何が立たないのか分からなかったが、ナニが勃たないのかをすぐに理解したみたいで、顔を真っ赤にした。
「すまん! 今のは忘れてくれ。私が悪かった」
「いえ……、その……、すぐに理解できず、申し訳ありません! でも、ストラス様のせいではありません! 世の中には勃たない方もいらっしゃいます! い、苺だって男娼なのに、殿方と一つになる事が出来ませんし! あ、でも、苺がストラス様のを元気にして差し上げればいいだけの話です! そうですよ! 苺が出来る事なら何でもいたします!」
苺はストラスを気遣ったのか、混乱しながら早口で喋っていた。ストラスは苺の返答に安堵したのか、苺を強く抱き締めた。
「私のどうしようもない悩みに対して、色々と考えてくれて、ありがとう」
「い、いえ! 苺が出来るのなら……。でも、本当に苺でよろしいんですか? 他の男娼達もいらっしゃいますし……」
「さ、流石にこのような事を他のやつには言えん。互いに悩みがあるんだ。こういう時は互いに解決すべきだ。そう思わないか?」
「確かにそうですね……。では、苺は腹をくくります。何としてでもストラス様のを元気にして差し上げます!」
「私も苺の恐怖心が取り除けるように努力する。苺の使命がきちんと果たせるように、協力する」
二人は互いの顔を見合わせ、笑った。そして、ストラスは中断していたマッサージの続きを受けた。ストラスは目元のタオルを自分でかけ直した。そして、全身のマッサージが終わると、ストラスに声をかけた。
「ストラス様、マッサージが終わりました。ご気分はどうですか?」
「――ん? あぁ、だいぶ疲れがとれた。感謝する」
「お時間がまだありますが、いかがなさいますか?」
苺はタオルなどを片付けながら、ストラスに尋ねた。ストラスは起き上がり、軽くなった肩を回しながら、残りの時間をどう過ごすか考えた。
「こういう場所には来た事が無いから、何をすればいいかが正直分からない。他の客はどんな事をしているのだ?」
「そ、それは……。こういう場所なので……、お客様にご奉仕したり、お話を聞いたりと様々です」
「そうか。では、私は苺から十分な奉仕を受けたから、私から何か褒美を与えた方が良いか?」
至って真面目な表情で話すストラスに、苺はキョトンとした。呆然とする苺の表情を見て、ストラスは首を傾げ、不思議そうな顔で苺を見た。苺はハッとし、丁重にお断りした。
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