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 女将が温かく出迎えてくれたが、メフィストの後ろに佇むストラスの疲れ切った姿を見て、頬に手を当て、心配そうな顔で見つめ、そばに駆け寄った。女将がストラスの体調を気遣い、椅子に座らせていると、奥から苺と月下が現れた。 「お二人共、本日もお越し頂き、誠にありがとうございます」 「おっ、苺ちゃんに、月下じゃないか。久し振り」  メフィストは二人の出迎えに爽やかな笑顔で応えた。しかし、苺はどこか憔悴しきっているストラスを見て、なんて言葉をかけていいのか分からず、少しおどおどした。  月下の後ろから覗き見するように、ストラスを心配する苺の姿を見て、メフィストは腰に手を当て、肩を落とすようにため息をついた。 「ストラス、苺ちゃんがビビってんぞ。お前は普段から怖い面なんだから。女将もそんなコイツに構ってあげなくていいから」 「ストラス様、ご無理をなさらないでくださいませ」 「あぁ、ありがとう。心配をかけて、すまない」 「俺は先に月下と行ってるからな。苺ちゃん、ごめんな」  メフィストは苺に謝り、月下とともに離れへ向かった。ストラスは立ち尽くす苺を見て、重い腰を上げて、苺の元へ歩み寄った。ストラスは苺の手を取り、離れへ続く廊下を少しふらつきながら、歩いた。 「……だ、大丈夫ですか? だいぶお疲れの様子ですし、また今度の機会でも――」 「いや、問題ない。……因みに、今日の離れはどこだ?」 「えっ、えっと……、あそこでございます」  ストラスは離れを目視すると、苺の手を引っ張り、黙ったまま、そこへ向かった。離れに入るなり、ストラスは苺と向き合い、苺の顔をじっと見つめた。そして、困惑する苺を無言で抱き締めた。  苺は体をびくりと震わせ、ストラスの行動に戸惑った。 「――ス、ストラス様? い、いかがなさいましたか?」 「やっと会えた……」 「……えっ?」  ストラスは苺に会えた事を噛み締めながら、吐息をもらした。苺はストラスの腕の中で、目をパチクリさせ、呆然と立ち尽くした。 「あっ、あの…………」 「すまん。苺を見た時から、ずっとこうしたかった。理由は自分でもよく分からないが……。苺の抱き心地が良いからなのだろうか? こうしていると安心する」 「そう言って頂けるのは嬉しいです。い、苺なんかでよろしければ……」  ストラスは満足すると、苺から体を離した。頬を赤くし、目を泳がせる苺の表情を見て、ストラスは小さく笑うと、苺の額に軽くキスをした。  苺は顔を真っ赤にし、慌てて部屋の中へ案内する。そして、ストラスにお茶を出し、風呂の準備をした。 「あぁ、苺。今日は風呂の準備をしなくてもよい」 「えっ、しかし……」 「ここに来る前、体は清めてきた。そして、申し訳ないんだが、今日は何もしなくていいから、私の添い寝にでも付き合ってくれ」 「そ、添い寝……ですか? か、構いませんが……、よろしいんですか?」  苺がお香を焚く準備をしている中、ストラスは服を脱ぎ、上半身を露わにした。それに気づいたのか、苺がマッチの火をすぐ消し、慌てた様子で声をかけてきた。 「ス、ストラス様! お、お召し物を脱がれるのでしたら、只今、浴衣をご準備いたしますので――!」 「いや、準備しなくていい。私はいつも裸で寝るんだ」 「で、ですが! そのような格好で床に入るのは、風邪をひかれるかもしれません」  ストラスは苺の話に聞く耳を持たず、下着姿になると、布団の中へ入った。そして、寝転がると、布団を開けて、目で合図するように、苺に布団へ入るように誘った。  苺は戸惑いながら、ストラスのそばへ行き、正座をし、頭を下げた。 「し、失礼……いたします」 「待て。明かりを消してくれ。それと、苺も服を脱げ」  苺はストラスに言われた通り、間接照明を消した。そして、苺は再び正座をし、頬を赤くし、俯き、黙り込んだ。 「苺が嫌なら別に構わないが。それよりも早くしてくれ。体が冷えてしまう」 「か、畏まりました……」  苺は立ち上がると、帯を外した。そして、浴衣を脱ごうとしたが、ストラスに背を向けた。 「何を今更、恥じらう? 私以外の客とも一緒に寝たりするだろう?」 「そ、そうですが! なんと言えばいいのか分かりませんが。その、ストラス様の前だと余計に緊張すると言いますか……」 「では、無理しなくていい。ここまで来て、苺にも嫌われたら、私は立ち直れなくなる」 「…………そ、そのような事を仰らないで下さいよ」

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