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ストラスは肩で呼吸しながら、額の汗を拭った。そして、何とも言えない充実感に浸りながら、苺に感謝を伝えようと思い、おもむろに苺を見た。
苺は両手を受け皿にし、口に含んでいた白濁液をドロッと出して、微笑んでいた。苺の顔や髪の毛には自分の放った白濁液がスライムのように垂れ落ちていた。
ストラスは自分の体液で愛らしい苺を穢した失態に動揺し、手の届く範囲にバスタオルが無いかを何度も確認した。ストラスの慌てる姿に、苺は思わず含み笑いをした。
「ふふっ、そんなに慌てて。ストラス様らしくないですよ」
「よく落ち着いてられるな。そんな事より顔などを拭け。はぁ……、罪悪感で胸が締め付けられそうだ」
「苺を穢してしまった――とかですか?」
「あぁ、そうだ。それより、随分と肝が据わったように見えるが? いつもの苺らしく無いぞ」
苺はストラスの話を軽く受け流し、バスタオルを取りに行った。自分の顔などをあらかた拭き終わると、ストラスの目の前に座り、ストラスの腹部に残る自分の白濁液を拭い取った。
「分かったんです。こんなにもお慕いしている方に大事に扱われ、焦がれるような思いがバチバチと火花のようになって、熱く鋭く華やかに体の全てを昇華していく……。そして、今しか見れない快感に悶える顔や仕草、耳を犯してくる低くてほろ苦い声、熱い飛沫。こんなにも充足感が得られたご奉仕はありません」
「――すまんが、何を言っているか、私にはよく分からない。とても気持ち良かったのは事実だが」
「ストラス様もいつか分かる日が来ますよ。それより、体を綺麗にしましょう」
「あぁ、そうだな」
苺は微笑み、ストラスの手を取り、一緒に風呂場へ向かった。苺がストラスの体を洗おうとしたが、ストラスは頬を赤くし、苺の申し出を断り、一人で黙々と体を洗った。苺は頬を膨らませ、少し不貞腐れた表情をし、仕方なく自分の体を洗った。
二人はいつものように、一緒に湯船に浸かり、他愛も無い話をした。ストラスは帰る支度をし、苺と一緒に玄関先へ向かった。
「今日もご利用ありがとうございます。次のご予約は入れますか?」
「そうだな。……申し訳ないが、当分ここへは来れない」
「あっ……、そうですか。それは残念です」
「すまないな。予約する時はあいつに頼むよ」
「畏まりました。お気をつけて、お帰りくださいませ」
苺はストラスを見送ると、残念そうな顔で店に戻った。女将はそんな苺を見て、ため息をついた。
「苺、あんた何かしたんじゃないのかい? ストラス様もなんか元気なさそうに見えたけど……」
「いえ、苺は特に何も……。離れの片付けをしてきます」
苺は女将に頭を下げ、そそくさと離れへ戻り、片付けをした。
「はぁ……、何か悪いことをしてしまったのかな? でも、毎週来てくださっていたし、金銭的に通いにくくなったか……」
苺はブツブツと独り言を言いながら、片付けをした。そして、片付けが終わると、机にそのまま置きっぱなしだった月下からの贈り物の箱を手に取った。
「ストラス様がまた来店されるまでの間に、これで……」
苺は他の男娼や女将に見つからないように、着物の袖で箱を隠し、自分の部屋に持ち帰り、引き出しに片付けた。
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