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第22話

 吐息も間近な距離で俺たちは見つめ合った。 「どうしたんだ?急に……」 「エースのことを思い出したい」  エースとすれば思い出せるのか、そう思って彼を見上げると、案外きっぱりと言われた。 「それは分からない」 「そうなの?」 「記憶の鍵を開けても、扉を開けないかも知れない。オレはお前が安全に過ごすことができるように記憶を奪って、うまくいったんだ」  にっと笑い、俺をかき抱いた。 「お前の記憶については構わない。今のお前が、オレの傍にいてくれるならそれで」 「ちょ、ちょっと」  抱いたまま部屋の中に引き入れられる。ドアが閉じられ、エースは寝間着をばっと脱いだ。鍛え抜かれた体があらわになり、脇腹に銃痕があった。英雄のあかしだ。 「今夜はヒーロもいない。いいだろ?」  軽薄な笑みを浮かべ、俺をベッドに連れ込んで強引にキスする仕草が、心底求めていたように感じられて背筋がぞくぞくした。キスの味もいつもと変わらないのに俺だけが敏感になっている。バレたくなくて、平気なふりの吐息をした。  エースが舌なめずりして、余裕の表情で微笑んでいる。 「他の男を抱いた事あるのかよ?」 「いいや?初めてだよ」 「童貞?」 「そう。ついに、つがいと一つになれるから余裕ないよオレ。痛かったらゴメンね~」  ニコニコ笑って、余裕から来ている笑いじゃないのか。じゃあなぜ笑うんだ、俺とするのが楽しみだから?  ちゅ、ちゅ、とキスが下りてくる。キスされて俺の耳と尻尾が出たのを、エースは幸せそうに耳を撫でた。  そして俺の寝間着の襟元を留めるボタンを引きはがすように外していく。現れた鎖骨の下にキスをして、俺の体はびくりと動いた。エースの手が腰の辺りの性感帯を撫でたからだ。  体をくねらせる俺をどう思っているのか、エースは脇腹だとか胸を手のひらで撫で、温かくて気持ちいいけれどそれは結局、俺を玩弄しているんだろうか?分からない、こういうのは初めてで。  学園で女子を抱いた時、俺は彼女たちの肌身を楽しまなかったか。乳房や肌に手の平で触れ、その温かさや滑らかさ、柔らかさを手にして実感を覚えていたはずだ。だけどそれは薄かった。  エースの手の平で肌をまさぐられ、俺は感じて立ってきていたし、もうじき完全に立ちあがる。今夜はその先のことまでする。エースを正面から見つめて、どうしてオレのあそこに触れてくれないのか。  彼の存在を目の前にひりひりと感じて、愛撫が気持ちいい。  焦らしている?俺は腰をもぞもぞさせながら、エースのキスが口の中に快感だった。そちらに気を取られている隙に、そっとあそこに触れられて、やわやわと揉みしだかれて天国にいきかけ、キスの合間に喘いでしまう。  完全に立っている所を大きな固い手にうまく扱われていた。尻尾が媚びるように、左右に短くふりふりと振ってしまう。 「ア、アッ、アアッ」 「すっごくよさそう。ここ好き?」 「ンッ、アッ」 「レイドはここを弄られるの好きなんだ~。先っぽ好き?こする度にピクピクしてる」  くちゅくちゅと先走りの汁ごと握られ、先端中心に扱かれるのが気持ち良くて頭の中が幸せになる。それとキスだけしかしていないのに、なぜこんなに乱れてしまう。  これが男同士のセックスなのか?俺を気持ち良くするだけのこれが。イキかけ、エースの手が止まる。 「ンンンッ……」  もどかしそうに腰をうねらせていると、エースが一度体を離して俺を見つめた。寝間着を乱してベッドに倒れ込んでいる俺をじっと見て、満足そうだった。  そしてエースは俺の足に手をかけ、膝を開かせた。 「エース?」 「男同士は、ここを使うんだ」  そっとエースの指先が俺の尻穴に触れて、俺はびくりと体を震わせていた。 「う……」 「優しくするから、逃げないでくれるか?」 「う、うう……そこ、汚い」 「香油がある。香油が清潔にしてくれる」 「本当?」 「大丈夫だから、オレに任せて」 「あ、ああ……」  ふつう人に見せない所を探られて、ただひたすら恥ずかしい。ここが性的に意味のある箇所だったなんて、ただふざけてからかうだけだと思ってた。  エースの指が中に入ろうとして、オレの尻は案外あっさりとエースを通した。なんだかよく分からない触感で、戸惑いがある。  そうしながらエースは俺のあそこにキスをした。  女に人気のありそうな面立ちのエースが、嬉し気に俺のあそこにキスする光景に目を奪われた。 「え、あっ!」 「レイドのここは素直だな」 「~~~~っ、エース、ふざけるのやめろ」 「ふざけてなんかいない。そこで見てろ」 「は、あっ」  俺をじっと見つめて先っぽを口の中に入れ、飴玉のように舐めている。手が俺の幹を軽く扱いていた。エロい表情で俺を見ながら、ちゅぱちゅぱと吸っている。じゅっと吸い上げられ、あそこがカチカチに固くなった。悦い。  不意に唇から外してエースがにやりと笑った。 「感じてるだろ。分かる」 「もう、やばい、かも……」 「出したい?」  幹にキスしてほほえみ、頬ずりをする。そうされると俺はガチガチになって、そのまま出しそうになるのに余裕の笑みで、ちゅっとキスする。 「な、なあ、エース、やめろよ。それ、出そうになる」 「もう?頑張れよレイ。オレもこんなんだけど」 「う……っ」  伏せていたエースが体を起こすと、エースの下半身についている男のものが見えた。オレよりも二回りはでかい。エースは男で、俺とこうなって興奮している。俺のあそこを咥えてこんな風になるのか。  お互いに興奮していることが明らかになって、気持ちが盛り上がっていた。  ぺろぺろと飴のように舐められ、キスされることを繰り返しながら、エースが欲しい。でもどこの何をどうして欲しいのか分からなかった。こんなに高ぶっていていいのか、胸がどくどくと鼓動を早く力強く打っていた。 「う!」  その時、俺の中に入っているエースの指が何かをした。それで俺は動けなくなるくらい感じた。 「な、なに?」 「ゆっくりやるから」  エースがちろりと俺のあそこを舐めて宣言した。  ゆっくり?  ぐうっと体の奥を指が舐め、その感覚に俺は腰をびくつかせていた。 「あ、ぁあ!?」 「どう?気持ちいい?」 「あ、あ!な、なにこれ……なにこれぇっ!」  エースの指先が体の奥深くをくにくにと揉むと、俺の体が快楽に熱く悦くなる。気持ちいい、そんな所が気持ちいいなんて反則だ。足を閉じようとしても足の間にエースがいるからできないし、それどころか俺のあそこをぺろぺろ舐めていて、それも気持ちいい。 「ふ、うんっ、何それっ……」 「イイ?」 「す、すごく変、ああ、変、変だよ、エース」  俺のあそこをエースが咥えて、じゅるりと音を立てて吸い上げた。吸い上げながらお尻をされるとたまらない感覚で一杯になり、俺はエースの頭に両手をやり、離したいのか手元に引き寄せたいのかも分からない。彼の頭をくしゃくしゃに撫でて腰を反らせていた。 「ああ~~~~~~~っ!……」  くにくにと体の中の一点を好きなように弄られて、腰ががくがくと震えていた。エースの鳩の鳴くような笑い声が聞こえて、ちょっと悔しいと思う間もなく責められる。俺の体はエースの指を締め付けて咥え込んでいるのに、エースの指は好きなだけ俺の穴を広げ、思うままに弄り回していた。  がくがく、と震えてしまう所を何度も責められて、時間がどれだけ過ぎたかも分からなくなる。エースと彼の責めと、認めたくない尻からの性感と、その性感にやられている俺だけになる。  射精したかどうかも何もわからない、快感の奔流だった。 「いくぞ、レイド」 「ああ、ああっ、エース……」  いくぞって何だ?と思ったら、俺の腰を抱え上げたエースが、俺の中にエースのあれを突き入れようとしているところだった。その時、知らない匂いが鼻をついた。  エースのものがぴたりとくっつき、大きいとわかり、それから押し入ってくる時の力強さと衝撃に、俺は言葉もなく悦んでいた。  エースと一つになり、彼が突き上げてくる力の確かさを全身で受け止めて、その快楽にぐちゃぐちゃに掻き混ぜられていた。  これが番ということなのか?快感の前に体裁も何もかも突き崩され、俺はただエースを求めていた。

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