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番外編.後編
「んっ…ああっ」
広い室内に男の甘い声が響く。愛おし過ぎるその男から発せられた快感の声は、彰人の身体の内部をカッと熱してしまうようだった。
いつもとは違う恋人の姿に、彰人の興奮はより高まっていた。まるでぶかぶかなジャージを身に纏っている悠哉の腕は、長く垂れ下がっている袖によって隠れてしまっている。それなのに首元は大きく開かれており、衣服を着ているというのに露出部分が多い光景が眩しすぎて目眩がした。そして何より、今悠哉の身体を包んでいるこのジャージが彰人自身のものだという事が何よりも彰人の興奮を駆り立てていた。
今日の六限終わり、職員室を出たらたまたま悠哉と遭遇した。普段だったら喜ばしい事なのだが、あの時の彰人は違っていた。なんと悠哉は、確実に自分のものではないジャージを身につけていたのだった。考えるよりも先に動いた彰人の足は、悠哉の元へ駆け足で向かっていた。一体誰のジャージを着ているというのだ、これは彰人にとって一大事と呼んでもいい程の出来事だった。
そしていざ悠哉に話を聞くと、ジャージの持ち主は自身の親友である難波慶であることが分かった。急いでいたためしょうがなく慶のジャージを借りた、悠哉からしたらただそれだけの話だ。しかし彰人は納得がいかなかった、自分以外の男の衣服を恋人が身につけるなど嫉妬で狂いそうになる。現に恋人がいる慶にまでもここまで嫉妬してしまっているため、彰人は相当嫉妬深かった。
しかし今の彰人は数時間前とはまるで違い、最高の気分の中恋人の身体を堪能していた。悠哉は今彰人のジャージを着ている、いわば男のロマンとも言っていい彼シャツならぬ彼ジャージに彰人は最高な気分だった。
「なぁ…このまますんの…っ?」
「いや、ベッドに行こう」
悠哉の声にハッとした彰人は、危ないところだったと我に返る。このままの勢いでソファで事に及ぼうとしていた、流石に浮かれすぎだと自分に呆れてしまう。
「別にここでしてもいいけど」
「えっ?」
「だってお前ベッド行く余裕なんて無いんだろ」
悠哉の見透かすような瞳に彰人はドキリとする。これは一枚やられたな、と彰人はふっと頬を緩めた。
「お前が分かるほど今の俺は余裕無さそうか?」
「ああ、喰われるかと思った」
冗談めかしてそう言った悠哉に、彰人はほっと胸を撫で下ろす。とりあえずがっつき過ぎて引かれてはいないようだった。
ふとあることを思いついた彰人は、悠哉の腕を引きそのまま身体を起こすと、自身の膝の上に悠哉を座らせた。
「わっなんだよっ?」
「この体制でするのも悪くないと思ってな」
悠哉の腰を支えるように手を添えると、悠哉の身体はぴくりと小さく反応した。「なんだよそれ…」と悠哉は彰人の言葉の意味がよくわかっていないようだったが、そらされた瞳からは微かに羞恥の色が見える。
なんて絶景なのだろうか、彰人は目の前の光景に口角が上がりそうになるのをぐっと我慢した。自身の膝の上に座っている悠哉は、ジャージのせいでいつもより幼く見える。可愛い、愛らしい、これらの単語が彰人の頭の中を駆け巡るように回っている。
「お前を見下ろすのも好きだが、お前から見下ろされるのも悪くないな」
「…は…?お前ってMだったのか?」
必然的に彰人を見下ろす悠哉の瞳に、ゾクリとした快感が身体を刺激する。自分がマゾヒズムなどと思ったことは今までの人生一度もなかった彰人だが、悠哉に見下ろされている今の状況に最高に興奮していた。悠哉相手ならマゾにだってなれるのだろうと、自身の新たな性癖に目覚めそうになってしまう。
手を伸ばした彰人は悠哉の唇に触れ「お前相手ならマゾにだってなれるかもな」と笑い混じりに言葉にした。そしてそのまま自然と二人の唇は重なる。最初の方こそキスに不慣れな悠哉は息継ぎすらまともに出来ていなかったが、付き合い始めてから回数を重ねる毎にキスにも多少は慣れたようだった。現に今、彰人の舌を自ら招き入れるように悠哉の唇が薄らと開いた事を彰人は見逃さなかった。
「んぅ…っふっ…ぅ」
彰人が悠哉の舌を絡め取れば、くぐもった甘い吐息が悠哉の口から漏れ出る。声変わりが既に済んでいる悠哉の地声は心地の良い低音であり、贔屓目などなしにしてもかなり良い声だと彰人は常々思っていた。そんな悠哉の声が行為中になるととびきり甘くなるのだった。この男のギャップに、彰人は幾度となく悩まされてきた。普段はクールな男が自分だけに見せる甘く蕩けた姿、愛おし過ぎる自身の恋人に、彰人の気は狂わされるようだ。
彰人の手はするすると悠哉の身体をなぞるように下へ降り、悠哉の腰に手をかける。そしてそのままジャージを下ろそうとすると「…っおい…っ」と悠哉の手によって止められた。
「もう挿れんの…?」
戸惑いの瞳を浮かべている悠哉に見つめられた彰人は「まだ挿れないぞ」と安心させるように悠哉の頬を撫でる。
「じゃあなんでもう下脱がそうとすんの…?いつもなら上先脱がすのに…」
どうやら悠哉は、いつもとは違う彰人の行動に違和感を感じてしまったらしい。悠哉と行為をするにあたって、彰人は必ず丹念な愛撫をしていた。首元、胸、腹、太もも、足首、悠哉の身体の余すことのない入念な彰人の愛撫は、本来ならしつこい程なのだろう。しかし悠哉との時間をたっぷりと味わい尽くしたい彰人にとって愛撫は欠かせないものだった。
しかし今日の彰人は、上すら脱がせていないというのに既に悠哉の下半身に視線を向けていた。それは頭ごなしに悠哉のジャージ姿に興奮したため早急に下を脱がそうとした、そんな馬鹿げた理由などではなかった。彰人にはとある考えがあったのだ。
「なぁ悠哉、今日は上を着たまましないか?」
彰人の提案に、悠哉は「着たまま…?」と首を傾げた。いつもの彰人ならば、悠哉の服を脱がせた上で行為に励んでいた。その理由としては悠哉の身体をまじまじと目にしたいからという私欲的なものなのだが、今日は上を脱がせる訳にはいかなかった。
「なんで?」
「だってせっかく俺のジャージを着ているんだから、すぐに脱いでしまったら勿体ないだろう?」
彰人はありのままの気持ちを正直に口にした。今日の悠哉は彰人のジャージを身につけているのだ。せっかくのシチュエーションを楽しまない訳には行かないだろう。
彰人の堂々たる答えに、悠哉は顔を赤らめながら「お前って意外と変態だよな…」と呟いた。
「今知ったのか?」
「そこは否定しろよ」
「否定したら嘘になるだろ、嘘はつきたくないんでな」
悠哉の右手が離れると、彰人は悠哉のジャージを掴みゆっくりと下へと下ろした。悠哉も抵抗することなく、大人しくジャージから足を抜きとっているためこれは許しが得られたと捉えていいのだろうと彰人は思うことにした。
下だけ脱ぐと彰人のジャージはまるでワンピースのようになっており、悠哉の性器を上手いこと隠してしまっている。見えそうで見えない悠哉の性器はジャージ越しに膨らみを持ち始め、ジャージの布を持ち上げていた。エロい、なんてエロいのだと彰人は初めてAVを見た少年のように息を荒らげた。
「下ばっか見んなよあほ…っ」
悠哉の羞恥を訴えるような声色が、さらに彰人の欲を加速させた。彰人はジャージ越しに悠哉の下半身に触れる。すると悠哉の口からは「あっ…んぁ…っ」と色っぽい声が漏れ出る。
突き出た先端を優しく撫でてやれば、悠哉の身体は軽く仰け反る。逃げられない快感になんとか耐えようとしている悠哉の愛らしい姿に、彰人はジャージの上から悠哉の性器を掴み擦るように上下に手を動かした。
「先走りでジャージが濡れてるぞ、直接触ってないのにそんなに気持ちいいか?」
「は…ぁっ…聞くな…っそんな事っ…ん…っ」
悠哉の目尻には涙の粒が浮かび上がっており、偉く扇情的謎の姿に彰人の下半身に張り詰めるような熱が込み上げてくる。
彰人が手を速めると、ぐちゅぐちゅとした卑猥な水音が室内に響く。悠哉は彰人にしがみつくように抱きつくと「あぁ…っだめっ…」と一際高い声を上げた。
「気持ちいいか?」
「ん…っ…」
コクコクと頭を上下させた悠哉は「う…っあぁ…っっ」と小刻みに身体を痙攣させた。布越しからも貫通してしまっている悠哉の白濁が彰人の手を濡らす。彰人ははぁ…はぁ…、と肩で息をしている悠哉の髪に優しくキスをした。
「んっ…はぁ…」
「可愛い悠哉、本当に可愛い」
「ばか…」
彰人が口を開けば、悠哉の潤んだ瞳に睨まれる。達したばかりの悠哉の頬は上気しており、唇は艶やかに濡れていた。たまらない気持ちになった彰人は両手で悠哉の頬を掴み、最高に色っぽい唇に噛み付いた。
「んんっは…っん…彰人っ…」
悠哉に肩を押されるが、悠哉の腕にはほとんど力が入っておらず彰人がキスを辞めることは無かった。そしてそのまま悠哉の尻に手を這わせると、彰人の手は誘われるように小さな窄まりへと導かれる。
悠哉の中へ指をつぷりと進入させると、狭すぎる肉壁にぎゅうぎゅうと締め付けられるようだった。
「ぁっ…んぅ…彰…人…っ」
彰人の指から逃げるように悠哉は腰を浮かせた。唇を離した彰人は「嫌か?」と悠哉の瞳を探るように問いかける。
「違う…ただ…今イッたばっかりだから…」
羞恥に耐えられなかったのか、悠哉は彰人の首元に顔を埋めた。悠哉の髪が彰人の首元をくすぐる。
「分かった、ゆっくりするから」
そうは言ったものの、悠哉の言葉に胸を焼かれるような興奮を覚えた彰人は、今すぐにでも自身を悠哉の中へ沈め弱い所をひたすらに突き上げたかった。しかしこの世の何よりも悠哉を大切に思っている彰人に、そんな身勝手なことは出来なかった。そのためゆっくりとナカを広げるように指を沈めていく。時間をかけてナカを解した彰人は指を抜くと「もう挿れても大丈夫そうか?」と悠哉の耳元で囁いた。
「ん…まって…この体勢って俺から挿れた方がいいの…?」
少し緊張した表情の悠哉と目が合う。悠哉の言う通り、座った状態のこの体勢、いわば対面座位と呼ばれる体位での挿入になるため、必然的に悠哉から腰を下ろす必要があった。
「嫌なら体位を変えるか?」
「別に嫌では…ただ初めてだから上手く出来るか分からなくて…」
悠哉の愛らしさに、彰人の胸はきゅんきゅんとときめきが増すばかりであった。初めての体位で上手く出来るか不安に思っているため、いつもよりどこか緊張している悠哉が可愛くて仕方ない。
「大丈夫だ、お前のペースでゆっくりしてくれればいい」
彰人が悠哉の目元にかかった髪をさらりと撫でると「ん…分かった」と悠哉は小さく頷いた。彰人の肩に両手を置いた悠哉は、彰人の自身へと後孔を当てた。まだ一ミリも入っていないというのに、ゾクリとしたら快感が全身を駆け巡るようで彰人の喉が鳴る。
「う…っんぅ…」
ゆっくり、ゆっくりと悠哉の腰が降りていく。悠哉のナカに自身が飲み込まれていく様子に、彰人は目が離せなかった。解した後でも悠哉のナカは彰人の人並みよりも大きな性器を受け入れるには狭く、酷く窮屈だった。それでも彰人を受け入れようと必死に腰を沈めようとしている悠哉の姿に、彰人は偉く興奮した。悠哉自ら繋がりを求めている、その事実だけで異常なまでの幸福感に包まれる。
「ふ…ぅっ…ちょっと…待って…っ」
一度腰を止めた悠哉は、彰人の肩に頭を乗せると「お前の…おっきい…っ」と吐息混じりに呟いた。色気を帯びた悠哉の少し掠れ気味な声が彰人の鼓膜を甘く刺激する。
「あぁ…っちょっ…なんでデカくなんだよ…っ」
「今のはお前が悪いだろ」
腰を引こうとした悠哉を阻止するべく、彰人は悠哉の腰をがっちりと掴んだ。
「抜こうとするな、ほら、挿れてくれ」
彰人はジャージを捲り、悠哉の隠れていた自身に直接触れた。すると突然の刺激に悠哉の膝ががくりと砕け落ち、彰人の自身を深くまで包み込んだ。
「あぁ…っく…っうぅっ…」
「はぁ…っすごいな悠哉…全部入った」
「ば…かっ…うぁ…っ」
彰人の自身は根元までみっちりと悠哉のナカに隠れてしまった。熱すぎる悠哉のナカ、ぎゅうぎゅうと性器を搾り取られるかと思う程、悠哉のナカに締め付けられる。
「すごい締めつけだな…っ」
「うっさい…っはぁ…っ」
「なぁ悠哉、この体勢だと俺は腰を動かせない。だからお前が動いてくれないか?」
彰人は悠哉の耳元で囁くように言葉を紡ぐ。分かりやすくぴくりと身体を反応させた悠哉は、頭をあげるとゆっくりと腰を上げた。
「うっ…はぁ…あぁっ」
ぎこちなく腰を動かし始めた悠哉に、彰人は絶景過ぎる今の光景に自然と頬が上がった。彰人のぶかぶかなジャージを身につけ、見下ろすような体勢で必死に腰を動かしている悠哉、チラチラと見え隠れする白い太もも、そして彰人がジャージを捲ったせいで露になってしまった性器がとても官能的だった。
「彰人…っもっ…無理…っ」
彰人に抱きついた悠哉は「お前が…動いてくれ…」と口にした。彰人の理性がぷりつとちぎれる。そしてそのまま悠哉の身体を押し倒した。
「…っちょっ彰人…うぁあっっ…」
彰人が腰を突けば、悠哉の身体が大きく仰け反る。一際甘い悠哉の甲高い声に、彰人の欲は更に煽られた。
「まっ…はやい…っああっっ」
「はぁ…っ悠哉…っ」
「んっっあぁっ…もぅ…イッちゃうからぁっ…っ」
涙と涎でぐちゃぐちゃになった悠哉の顔は、今にも達してしまいそうな程の快感に支配されているようだった。なんて可愛いのだろうか、彰人は迫り来る射精感に吐息を漏らし、腰の動きを加速させた。
「ああっイクっ…イッちゃっっ…ああぁっっ」
「くっ…はぁ…っ」
きゅうっとナカが締まる感覚に、耐えることなど出来ず彰人は悠哉の中へと欲を吐き出した。達した余韻から胸を上下させている悠哉の頬にそっと手を添え「最高に可愛かった」と彰人は触れるだけのキスをした。
「今日のお前…すごい興奮してたろ…」
「俺が興奮してるのは今日だけの話じゃないぞ、お前とする時は常に興奮してる」
「それはそうだけど…今日は特にすごかった気がする」
悠哉は全身から力が抜けたように、長い袖をだらりと垂らした。今にも寝入ってしまいそうな悠哉に「ベッドまで運ぼうか?」と彰人は優しく声をかけた。
「いや…先シャワー浴びたい…」
「分かった」
彰人が身体を抱き起こすと「あっ…!」と悠哉が声を上げた。
「どうした?」
「ジャージ…濡れてる…」
ジャージの裾を片手で持ち上げた悠哉は、シミになってしまっている中心部に視線を向けた。そんな事後を感じさせる悠哉の姿に、彰人の喉仏は大きく上下する。慌てて一切の下心を抹消しようと首を振った彰人は「洗濯すればいいさ、気にするな」と悠哉の頭を撫でた。
「そういう問題じゃない…ジャージってもう一着持ってるよな…?これもう着てくなよ」
「…どうしてだ?」
「たとえ洗濯しようが気分的に嫌なんだよ…」
頬を赤らめた悠哉の可愛さに、彰人の心臓はひゅっと一瞬だけ止まってしまったような錯覚さえ覚えた。一度自分の精液がついてしまった、というだけで悠哉としてはそれを彰人に着せる訳にはいかなかったのだろう。彰人はむしろ着たいと思える程だったが、ここは悠哉の希望通りにしようと決めた。
「分かった、じゃあこのジャージはお前の部屋着にすればいい」
「部屋着?」
「ああ、まだ着れるんだから捨てるのも勿体ないだろ?」
「…やだよ動きにくいし、それにまたお前が変に興奮するだろ」
ふっと笑みを浮かべた悠哉は「ほら、早く風呂まで連れてってくれ」と彰人の頬を軽く抓った。自分の考えが見透かされてしまった事に眉を下げながら「たまにでいいからまた着てくれよ」と言い今度こそ悠哉を抱き上げ浴室へと向かった。
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