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第40話 【R18】誕生日プレゼント
ルームサービスの食事を終えて風呂から出てきた頃には、窓の外は夕暮れに染まり始めていた。
「ルームサービスって、コース料理もあるんだね。風呂も広いし、眺めもいいし、快適な部屋だなぁ」
バスローブの肌障りも良い。
感心する直桜を、ベッドの上から護が手招きした。
ベッドに上がると、護に腕を引かれた。体を反転されて直桜の体を護が後ろから抱き締めた。
「今日は鬼化してないんだね」
「ん、まだ、今は。このまま直桜を抱き締めていたい気分です」
直桜の肩に顔を預けて、すりすりと寄せる。その仕草が、何だか可愛い。
眼鏡を外して髪を降ろしている護は艶っぽくて、余計にドキドキしてしまう。
「今日、穂香さんと何を話していたんですか?」
「穂香と? あー、色々。穂香の趣味の話、とか?」
BLだの腐女子という単語は、穂香の名誉のために言えない。
「何で、突然、穂香の話……、ふぁっ」
耳に息を吹きかけられて、変な声が出た。熱い舌が耳を舐めて、甘く食まれる。
「んっ、ぁっ、くすぐったぃ……」
いつもより敏感に感じて、思わず口を覆う。
護の手がバスローブの中に侵入して、胸や腹を弄る。滑る手は決定的な快楽を与えてくるわけではないのに、じれったくて気持ちよい。
「帰り際に穂香さんに言われたんです。直桜は眼鏡でスーツの男性が好きらしいと。だから、どんな話をしていたのかなと」
(穂香、何言ってんの⁉ 自分の趣味バレしてもいいの、あの子!)
何も知らない護がそれだけ聞いたら、確かに何の話をしていたか気になるだろう。
「ん、だから、その、好みの話っていうか。……ぁっ!」
護の指が、胸の突起を優しく撫でる。
ふわふわした感覚が弱すぎて、もっと欲しくなる。
「いつも鬼化した、ちょっとガチムチな私に抱かれているでしょう。直桜の好みとは遠そうだし。それに、直桜はガチムチ、嫌いでしょう?」
「それ、槐に言った、只の嫌味っ。ぁ、ぁ……」
腰をしっかりホールドされて、逃げられない。
ちゅくちゅくと水音を立てながら耳を執拗に舌で弄られて、長い指が芯を持ち始めた胸の突起を緩く弾く。
ビクビクと体が震えて、疼きが腹に溜まっていく。
「前に、神紋を定着させるために、直桜が私を抱いたでしょう。あの時の直桜、素敵でしたよ。もしかして、タチの方が好きですか?」
舐め回されてすっかり濡れた耳に吐息が掛かる。それだけで、びくりと肩が震える。
「どっちでも……、てか、さっきから、何の話、してんの。ん、んんっ」
胸を弄んでいた護の指が、下に降りる。
すっかり硬くそそり立った直桜の男根を、バスローブの上から撫で上げた。
腰が波打って、体がびくびくと震える。
「今日の直桜は感じやすいですね。興奮してます?」
何度も何度も、護の指が男根を撫でる。布の上から擦られる感覚がやけに鮮明で、感じてしまう。先走りがバスローブに沁みた。
「護が、いつもより、意地悪だから。ぁ……はぁ」
「前から何となく思っていましたが、直桜は意地悪されるの、好きですよね。例えば、こんな風に」
「……へ?」
腕を後ろ手に捕まえられて、足を護の足で押さえつけられる。そのまま強引に開かれた。
「な、何、なんで、はずかし……」
「でも、興奮するでしょ?」
護が直桜のバスローブを捲り上げる。ギチギチに勃った男根が顕わになった。
先走りが流れる口を、護の指がクニクニと刺激する。それだけで気持ち好くて、声が漏れる。
「こんなに勃たせて、直桜、可愛い……」
噛むようなキスが口内を犯す。舌を吸われる度、刺激が勃起した先に響いて、後ろの口がヒクヒクと疼き出す。
「本当はどっちにするか、聞こうと思っていたんですが」
「どっちって、何?」
護を振り返るが、涙が溜まって良く見えない。
ぼやけた視界の護の口の端が上がって見えた。
「タチとネコ。でも、今日はネコの方がよさそうですね」
首筋に噛み付いて、吸われる。護の手が、そそり立った男根を扱く。
「ぁ! ……ぁ、ぁ」
抑えようと思うのに、声が出てしまう。
強く掴んだまま話してくれない腕も、抑え込まれた足も、そのまま強引に扱かれる陰茎も、全部が興奮する。
「直桜、直桜、気持ちいい? こんな風に拘束されて、鬼化していない私に触れられるのは、興奮しますか?」
護の舌が直桜の尖り切った突起を舐め挙げる。気持ち好くて体が反り返る。
先走りが流れた陰茎を扱く手が、ぐちゃぐちゃと卑猥な音を立てている。
「気持ちぃ……、いつもの、護に抱かれてるの、うれし……、護に、いっぱい、触れて、ほし……」
「じゃぁ、今日は、このまま、しましょうね」
返事をしようとした口は口付けで塞がれた。
ズルズルと崩れた体をベッドに縫い付けられて、両腕を頭上で押さえつけられる。
先走りを纏って濡れた指先が、後ろの口を緩く刺激した。
「ここ、ちゃんと緩くなってますね。もしかして、お風呂で自分で解 しました?」
「ん……、ちょっと、だけ……」
「勝手に一人でするなんて、いけない子ですね」
護の指が既に二本、中に入って直桜の良い所を刺激する。
「ちがっ……、早く、護の、ほしくて……」
護が急に雄の顔をした。
「そういう可愛いこと言って煽ると、手加減できませんよ」
指が容赦なく奥までついて、腹の上側を激しく刺激する。
気持ちが良すぎて腰が浮く。
「やっ、ダメ、イくっ」
「まだダメ、私が良いと言うまで、我慢できますか?」
護の言葉に、ぐっと腹に力が入る。
「が、がまん……、でき、できな、ぃ……っ」
耐えようとしても感じる刺激が強すぎて、どう耐えていいかわからない。
上気した顔が熱くて、それ以上に腹が熱い。
護の舌が突起をぐるりと舐め挙げた時、腹に溜まった快楽が一気に噴き出した。
「ぁっ、ぁっ!」
直桜に体を添わせていた護の腹を、直桜の白濁が汚した。
それをぼんやり眺める直桜に、護が愛おしそうに手を伸ばす。
「ダメだと言ったのに、出しちゃいましたね。ダメって言われて、気持ちよくなっちゃいましたか?」
こくりと頷くと、護が優しく口付けてくれた。
「じゃ、続き、しましょうか」
優しい手が、黒い何かを直桜の目に掛けた。
「部屋にあった、アイマスクです。見えないと触れる感覚に集中できて、もっと気持ちよくなれますよ」
「や、いやだ、護」
必死に腕を伸ばす。
ちゃんと手を握って、護が体を重ねてくれた。
「大丈夫、くっ付いていれば、怖くないでしょう。声と肌で私を感じてください。たとえ目が潰れても、私を探し出せるように」
「ん、わかった」
素直に頷いて、護の肌に手を滑らせる。
後ろの口に、護の陰茎の先が押し付けられる。熱くて硬いモノが、ズブズブと中に入ってくる。
中を緩く擦りながら、ゆっくりと動く。いつもならじれったいと感じる動きが、やけに気持ちが良い。
「直桜の気持ちいいところ、じっくり擦ってあげますね」
護の声が耳元で聴こえて、びくりと体が震えた。自分でも中が締まったのが分かった。
「声が聞こえただけで感じちゃったんですか? それとも、嬉しかった?」
「ん、護の声、すき……、んっ、ぁっ、こえ、だけで、イきそ……」
「あぁ、もう。そんなに煽ったら、俺が我慢できない」
抱き締める護の体が一瞬大きくなって、また戻った。
鬼化しそうになるのを、必死に耐えているのだとわかる。
びくん、と一際強い刺激が脳を貫いた。
真っ暗な目の前に火花が散る。
「何、コレ、こん、なの……」
今まで感じたことのない刺激が、何度も何度も、襲ってくる。
「直桜、そのまま、我慢しないで、感じて」
「ヤダ、怖ぃ、待って、ぁっ!」
「ちゃんと抱いているから、イっていいですよ」
「まも……、まもるっ」
護の首筋にしがみ付く。
護が動く度に、せり上がってくる快楽が抑えようとしても我慢しようとしても耐えられない。
「すごい、締まる。直桜、もう、イくっ」
「ぁ、あぁっ!」
一際大きな快感が腹から背中に突き抜けた。
ビクビクと体が震えて、足に力が入らない。確実にイったのに、射精した感覚がない。
「直桜、出してないですね。もしかしてドライでイきました?」
「……へ?」
アイマスクが外れて護の顔が間近に見える。
直桜を眺めていた護の目が艶を帯びて笑んだ。
「こんな顔の直桜が見られるなんて、最高のプレゼントです」
顔を包んで、唇に頬に額に、たくさんのキスが落ちてくる。
「体、まだ、ビクビクして、動けない」
「いいですよ、そのままで」
直桜の隣に横たわった護が、直桜の体を抱き締めた。
その感触すら刺激になって、体が震える。
「これ、もしかして、メスイキってやつ……? ファンタジーじゃなかったんだ」
BL本で何度か読んだことがある描写が、まさか自分の身に起こるとは思わなかった。
「こんなの知っちゃったら、俺、もう護のこと、抱けないかも」
体を反転させて、護の胸に抱き付く。
「だったら、その分、私が直桜を抱き潰しますから。何度でもメスイキさせてあげますね」
「これを何度もされたら、死んじゃう。無理」
「そんな直桜が、可愛い。可愛すぎて、もっと見たい」
護の腕が直桜を抱き締める。
その力がいつもより強い気がして、胸が苦しくなるほど嬉しい。
「とりあえず、手枷と目隠しは揃えましょうか」
耳元で嬉しそうに呟かれて、ドキリとする。
自分にそんな趣味があったなんて、知らなかった。
(確かに興奮したけど、それは護に掴まれていたからであって、手枷で興奮するかどうかは)
抱き締めたまま直桜の手を握る護の手と、さっきまで直桜を押さえつけていた手は、同じくらい優しい。
拘束と呼ぶには優しくて、包むというには激しいあの手に、興奮するし安堵する。つまりは護になら、何をされても嬉しいのだと、感じてしまう。
今度、穂香にソフトSMのBL本のオススメを聞こうと、ぼんやりと考えながら、大好きな腕の中でウトウトと温もりに浸っていた。
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