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第4話 「独占欲」──名前のない苛立ち(♡)

「アカツキ、最近ソラとよくつるんでるじゃねーか」  高床倉庫で槍の手入れをしていると、狩り仲間がニヤニヤと笑いながら話しかけてきた。  アカツキとソラが連れ立って木立の陰に消えていく姿は、村人にはしばしば目撃されていた。  特に隠しているつもりはないし、他の者も、思い思いに楽しんでいる。  関係ない者がいるところですると、うるさいからはばかられるだけであって、誰が誰と何をしようが、三人でしようが四人でしようが、無理矢理でない限り、特にとがめだてする者はいない。男同士でマラ棒をしごき合っている者も、他にいないわけではない。  しかし、若い男のリーダー格のアカツキと、狩りにも行かずに貝掘りや魚とりをしているソラの組み合わせは、珍しいのだろう。 「だからなんだ」  槍の穂先をしっかりと紐でくくりつけ、ぎゅっと紐を握りしめながら、アカツキは狩り仲間を睨んだ。 「アイツ、狩りもできねーし、ヒョロいし、女の話もできねーし、声小さくて何言ってるか時々わかんねーし、何してんの?」  下卑た目線に、「わかってるだろ」と言いたい気持ちと、それでも聞いてくる卑しさへの嫌悪が入り混じった。  ──いや、俺は何を「わかっている」と思ってほしいのか……?  そう、思い直した。  マラ棒をくっつけあって気持ちよくなっているだけの関係だ。  男同士だ。夫婦になることはあり得ない。時々いる、男同士でマラ棒をしごき合っている者たちも、それぞれ女との間に子を作っている。  一応、「夫婦になる」「所帯を持つ」という仕組みはあるが、「同じ竪穴住居に住む」「正式な夫婦だとなんとなく認められる」程度の意味しかなく、女の側も、その時その時で惚れた男との間に子を作る。  女がその子の父親だと思ったものが父親になり、生まれた子は女衆の間で育てられ、大きくなると、アカツキが今率いているような男衆の仲間になる。  他の者とまぐわったりしないと誓い合う者もいるが、その誓いが守られているかどうか、当人たち以外に気にする者はいない。  だから、ソラに誰が何をしようがアカツキの知ったことではないし、ソラが断らない限り、誰にとっても自由なのだ。  まぐわった女の話をするのは、アカツキと他の男達の間では普通のことだった。  こうやって狩りの道具を手入れしたり、酒を飲んだりしながら、どこそこの女はアソコの具合がいいとか、喘ぎ声が大きすぎて萎えるとか、そんなことをあけっぴろげに男だけで話すのが、お決まりだった。そして、そういう場にソラは絶対に来なかった。 「別に。お前に教える筋合いはない」 「いいだろ、減るもんじゃなし」 「……」  ソラの身体から、潮の香りに混じっていい匂いがすることも、マラ棒をこすりつけながらアカツキの身体を撫でる手の熱も、大きな瞳から流す涙も、朱に染まった頬も甘い声も、誰にも教えたくなかった。  ソラに唇の端を吸われた瞬間、なんだかわからないがソラの唇をもっと味わいたくなって、アカツキはソラの唇に食いついた。  そんなことをするのは初めてだった。  女とする時は、いつも後ろからだった。というか皆そうしているはずで、後ろから以外の話を聞いたことがない。立ったまま腰を振っていればいいだけなので楽だし、それで何も不足を感じたことがない。  だから、唇を吸うという行為は聞いたことがなかったのだが、あの時ソラの唇を吸った瞬間、心の臓が激しく脈打ち、下半身の熱がさらに高まった。  もっともっとソラの唇を味わいたくなって口の中に舌を突っ込むと、心臓が喉までせり上がるほど苦しくなり、突き刺すような快感と、はじけそうなマラの痛みに苛まれ、ソラの頭を力いっぱい抱きしめた。  女陰(ホト)があれば絶対ブチこんでいたのに、ソラにはやっぱり、女陰はなかった。  とにかくソラの中にブチこみたくて、口の中に出すことを思いつき、翌日ソラにやらせてみたら、これまた気が遠くなりそうなほど気持ちよかった。  ソラがアカツキのマラを手で支え、おずおずと舌を這わせると、熱い吐息がサオにかかり、それだけで出しそうになった。  じゅぷじゅぷと音を立ててしゃぶり、くちゅくちゅと先端を舌と唇で吸い付けるソラの顔を、上から覗き込むと、何故か触りたくなって髪を撫でた。  後でミル貝を比べっこしてくっつけ合うと気持ちよくなる、ということを想像しているのだろう。頬を染めて「ん……、ん……」と鼻から甘い声を上げ、尻をぷるぷると震わせるのがたまらなかった。 「出したら、全部飲み込むんだぞ」  髪を撫でながらそう言うと、コクコクと頷いたから、いっぱい出してやったのに、「まずい」と言うので、アカツキも味見してやろうと、またソラの口を吸ったら、甘い鼻声を上げて喜んだ。  全部、アカツキが自分で手に入れたものだ。他の奴には、何一つやりたくない。  槍に飾り紐を巻き終えると、アカツキはドンッ!と槍を床に突きながら立ち上がった。  ビクッと飛び上がった狩り仲間を見据え、槍を倉庫の壁に立てかけた。  苛立ちが収まらない。 「片づけとけよ!」  散らかった麻紐や木くずを蹴散らし、アカツキは倉庫の階段を下りていった。  イライラしながら歩いていると、貝塚にゴミを捨てに行くソラに、「重いだろ。持ってやるよ」と言って肩に手をかけているヤツがいた。  無言でぶちのめしてゴミと一緒に貝塚にぶち込み、茂みの陰にソラを引っ張っていって、いつもの通りマラ棒をこすりつけあった。 「いいか、ミル貝の比べっこは、俺が教えたんだからな」 「うん……」「んんっ……」「あん……」 「コレもだからな」 そう言って唇を吸うと、ソラはアカツキの背中に手を回してしがみつき、唇を吸い返してくる。 「んんっ……、んっ……」 「はぁっ……、はぁっ……、他の奴としたら、タダじゃすまさねーぞ」 「あぅんっ……、あんっ……うんっ……」  ソラは聞いているのかいないのか、アカツキ自身すら独り言のような。  言葉よりも吐息よりも激しく、二人は夢中になって身体をこすり合わせた。

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