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第6話 槍と衝動(♡)

 きしむ木の階段を上がり、倉庫の扉をそっと開けると、月の光が差し込んだ。  ソラは、壁に立てかけてある槍の中から、一本を取り出した。  持ち手に緋色の紐が巻き付けてある。草の根で染められた、アカツキの槍だ。暗くて色がわかりづらくても、アカツキの手の匂いがするのでソラにはわかる。  槍を抱えてスンスンと匂いを嗅いでいるうちに、身体が昂ってくるのを感じた。  そっと扉を閉めて、ごろんと床に横たわり、また持ち手の匂いを嗅ぐ。 「んっ……」  昂ってきたマラを、槍の柄にこすりつけ、ゴシゴシと槍を上下に動かす。頭の中では、アカツキとミル貝をくっつけ合っている時のことを思い描く。 「はぁっ……、はぁっ……」  気持ち良くて、切なくて、胸がぎゅうぎゅうする。  潤んだ瞳をぎゅっとつぶると、目尻から涙がこぼれた。  最近、毎晩のように倉庫にやってきて、こんなことにふけってしまう。  自分に女陰《ホト》があればいいのに。そうすればアカツキはソラにマラ棒をくれたんだろうか。  いや、アカツキは、たまたま成り行きで「ミル貝の比べっこ」をしているだけで、ソラとまぐわいたいわけでも、夫婦になりたいわけでもない。  昨日の夕餉で、アカツキとマルメが夫婦になるようなことを聞いた。  マルメは豊満な身体で村一番の美女だ。ドングリ団子作りも上手で、土器も簡単なものなら自分で作ってしまう。アカツキと夫婦になるのにふさわしいだろう。  マルメと新しい竪穴住居に居を構えるようになっても、時々は、ソラとミル貝の比べっこをしてくれるだろうか。唇を吸ってくれるだろうか。  それでもいい……。でも、それじゃいやだ……。  アカツキが安心して新しい暮らしを営めるように、雪の降る中、狩りに行かなくていいように、ソラは今日、頑張ってクジラを獲ってきた。  でも、昨日はキジを持ってきてくれたのに、今日は来なかった。  クジラを獲った後、アカツキがソラを見下ろしているのに気づいたけれど、村の人々に取り囲まれて声をかけることができずにいるうちに、どこかに行ってしまった。  いつもソラを笑っていた村の男たちも、今日は手の平を返したようにソラをほめたたえた。  別にソラは強くない。泳ぎが得意なだけなのに、変わり身の早いことだ。  皆が褒めてくれたのに、アカツキと話すことができなかったというだけで、ソラの今日一日は、なんだかしぼんだものになってしまった。  用を言いつけられるのでもなんでもいいから、アカツキに会いたかった。  見かけるだけじゃいやだ。近くで話して、そして……。  昨日も今日も、アカツキと「ミル貝の比べっこ」ができていない。  アカツキの取り巻きをやっている男から「アカツキと気持ちイイことしてるんだろ? 俺も頼むよ」などと声をかけられることもあるが、全く気が向かず、いつもスルリと逃げ出していた。  何故かはわからないけれど、アカツキじゃなければイヤだ。  あの力強い腕で抱きしめられたい。そして茂みに連れ込まれて、昂ったマラ棒をいじられたい。  最近は、ソラがアカツキのマラ棒を口でしゃぶり、精を一回出させてから、アカツキとソラのマラ棒をこすり合わせるようになっていた。アカツキが一回出しただけでは満足しなくなったからだ。  最初は変な味だから気が進まなかったのに、最近はアカツキのモノを口でしゃぶるだけで、後でマラ棒をこすり合わせることを想像して股間がジンジンと疼くようになっていた。  ちゅぷちゅぷとマラ棒をしゃぶっていると、アカツキが熱く湿った息をついて、ソラの髪を優しく撫でてくれる。  その指が耳元をかすめると、それだけで「んっ」と甘い声が出てしまうのだ。  いっぱい出たアカツキの子種を全部飲み込むと、アカツキは口を吸ってくれる。口はマラ棒と何の関係もないはずの場所なのに、口を吸われると、ますます変な声が出てしまう。 「あっ、あ……、アカツキ……、もっと……」  妄想の中では、ソラに女陰があって、大きくて硬いアカツキのマラ棒が、そこをじゅぷじゅぷと突いている。  でも現実にはソラは男で、女陰はないから、まぐわうことはできない。  女陰があったらいいのに。でもミル貝の比べっこが始まりだから、女だったらアカツキと仲良くなることはできなかった。 「あっ……、あんっ……、あんっ……」  やるせない気持ちとは裏腹に、アカツキの匂いに包まれ、まぐわいを夢想して、ソラは槍の柄にいっそう激しくマラ棒をこすりつけた。 「あ……、あぁっ……。アカツキ……、もう、ダメっ……」  目尻に涙を浮かべながら、槍をぎゅっと抱きしめて出そうとした瞬間、 「わわんっ!」  という大きな吠え声に、ソラは文字通り飛び上がった。 「ひゃあぁっ!」  振り返ってみると、いつの間にか倉庫の扉が開いており、月を背にして立っていたのは、松明を持ったアカツキと、得意げにハッハと尻尾を振る、ロロだった。

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