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第2話

「もしも神がいるとしたら、」 と、奴は言う。 「君がこんな目に遭うはずない。そうだろう?でも君は、ひどい目に遭う。昨日も今日も、明日もその次の日もその次の日もずっと。これが、神様がいない証明だ。」 祈ってごらん、と、奴は言う。 俺たちは、古びた教会にいた。 もう誰も通ってないのだろうその教会は、俺たち以外に誰も来そうにない。どうせ助けが来たって奴に返り討ちに遭うだけだから、それでいい。余計な犠牲者は出したくない。 でも、もしも神様とか、超次元な存在がいるとすれば、助けて欲しいと思った。俺は今、後ろ手に縛られて、祭壇の、生贄の間に座らされている。 ひんやりとした空気が肌をぞろりと撫で、重苦しい空気に、俺は息苦しくなった。何をされるのだろう。 以前、地下室に閉じ込められた俺は、大体の拷問を一通り受けた。覚えている限り最後の処刑は、確か、生きたまま溝鼠を頭蓋骨の中に入れられたことだ。 ねずみを入れるために頭蓋骨を砕く音が聞こえた時は、ようやくこれで失神できると嬉しかった。 それから、正気に戻すために更にいろんなことをされて、時間が経つうち体も治った頃、ヨーロッパを連れ回されて、今に至る。 「・・・何をする気なんだ。」 「今までよりは、ぬるいことだよ。」 と奴は言う。 脚を開かされ、ズボンを脱がされた。 下着も引きちぎられ、脚につめたい空気が触れる。 奴の吐く息が脚の間に触れ、俺は身じろぎした。 「う・・」 フェラでもしてくれるなら、いいのだけれど。そんなはずはなかった。奴は、俺にしゃぶらせることは会っても、自分がしてくれることはまずない。 俺の現実逃避を突き破るように、奴は内股に何かを突きつけてきた。 氷みたいに冷たい。 自由になる精一杯の稼動範囲で首を動かして見てみると、内股に当たったそれは、小ぶりな十字架だった。 「何する気だ・・・」 わからない。恐怖で声が掠れる。 それでも奴は、教えてくれなかった。 今日は、そういう趣向で行くつもりらしい。 「目隠し、しようか。」 奴の荒い息が聞こえる。布切れで視界を塞がれ、俺は震えた。 「祈れよ、ほら。」 頬をぺちぺちと叩かれる。 暗闇の中で、奴の息遣いだけが聞こえる。 「アシュベル、お前は美しい姿をしてる。本当に・・・」 奴の息が首筋に当たり、熱い唇が次に当たった。牙を突き立てられ、俺は呻く。痛みと熱さで体が火照った。 「あ、あ・・・メア、」 俺は奴の名を呼びながら、体が震えるのを感じた。 がくがくと、膝が震える。苦しみの中の喜び、とでも言おうか。 久しぶりに触れる人肌の柔らかさ、息遣いの熱さに、俺は酔い痴れた。 血を吸い終えた奴は、そのまま唇を俺の首筋から、もっと下へとずらしていく。手も優しく俺の肩を撫でる。思ってもみない優しい愛撫に、訳がわからなくなっていた。 「な・・。何・・」 「ちょっとイイコトしたくなっただけだよ。」と、メアディスは俺の上半身も脱がし始めた。 「逆らわないから、いいこにするから・・・犯して終わりにしてくれよ。」 出来るだけ媚態を凝らしてお願いしてはみたけれど、奴はあまり聞いていないみたいだった。 音しかない世界で、俺は、出来るだけ奴のされるがままになる。 奴の手つきはあくまで優しくて、壊れ物を扱うようで、それだけに、この瞬間が終わったらどうなるのだろうという恐怖で俺は泣いた。 優しくされることが怖かった。 押し倒されて、口に奴の指を入れられた 「しゃぶれ」と命令され、言われるとおりにする。 奴のアレをしゃぶっているつもりで、丁寧に。 喉の奥まで突っ込まれ、えづく。えづきながら、喉を広げて出来るだけ受け入れようとする。強制されてるからではない。そうするように、調教されているからだ。 「ああ・・先にやっちゃうか、なぁ。」 柔らかく俺にのしかかっていたはずの奴の体がふわりと離れて、俺は不安になる。 不意に、奴の手が俺の陰茎をつかんだ。その乱暴な手つきに、俺はぞっとする。 身を捩り、逃げたいと意思表示をするけれど、その細身にそぐわない力で首を押さえつけられて、すぐに動けなくなった。 これ以上抵抗しても、ひどい事を倍掛けでされるだけだ。諦めた。 俺が諦めてしまうと、奴はまた俺の陰茎を手にした。 「祈れ」と奴が言う。 「助けてください・・・」と俺は言う。神に願っているというよりは、奴に対しての哀願だった。 「イッ・・・」 鈴口に、冷たいものが当たる。先ほどの十字架か。 判断が付くよりも早く、俺は痛みを感じた。 硬いものが尿道へ進入してきている。 「が、あッ・・・」 今までよりはぬるい、か。確かにそうかもしれない。そうかもしれないが、自分が飛び上がるのすら、痛みに変換されて体の一番弱いところを責めてくる間隔に、自然と涙がこぼれた。 「・・・見せてやるよ・」と目隠しを取られ、首を無理やりうつむかされた先の視界で、俺の陰茎は明らかに大きすぎるものを差し込まれ、真っ赤に腫れれていた。 「裂け、裂けるっ」 俺はうわごとみたいに、小声で呟いた。 「抜いて、ッ、抜いてくれ」 奴は、俺の慌てふためく様子が楽しいらしく、にやりと笑って、言った。 「このまま、かわいがってあげようねぇ。」 地獄のようだった。 揺さぶられるたび、体の中心が、流血しているのじゃないかと言うくらいに 痛む。ナノに、すっかり調教された俺の体は、犯されていることに快感を感じていた。苦痛と快楽がごちゃ混ぜになる辛さに、俺はただただ耐えることしか出来なかった。 「ひっ、、ィ・・・!あ、・・・あぁ、っ、め、あ、ぁ、・・・出したい、ッ、・・・く、る、し・・、!あ・・・、う、ぅ・・・」 メアディスの陰茎は、奴のかわいらしい顔と正反対で凶悪極まりない大きさと形をしている。それで体の奥の奥まで突かれて、俺は射精したくてたまらなくなっているのに、先端に差し込まれた凶器のせいでどうしようもない。 「ほら、ッ、中でイけ。・・・女みたいに、ッ、ナカイキしろっ!・・・ナカイキ覚えちゃえ・・・っ、」 奴が俺の耳で囁く。その声が、息遣いが脳まで犯してくるようで、俺はされるがままになぶられている感覚に泣きながら身をよじらせる。 「や、だぁああっ!ちんこ、こわれる、っ、しんじゃう、うっ!」 もうこうなると、俺は泣きじゃくって許しを乞うことしか出来ない。 奴が飽きてくれるまで。それか、俺がまたおぞましいことを教え込まれるまで。 背筋がびりびりする。眼がまわって、気持ちいいのか、痛いのかわからない。どこまでも落ちていくような妙な浮遊感に怯え、それを起こしている張本人である奴にすがるようにして、俺は泣き叫ぶ。 惨めで、苦しくて。 でも、どこかで安心してすらいた。 母親の胸に抱かれているかのような感覚。 生死を握られている感覚は、まるで保護されているようでもあって。 それはきっと錯覚でしかなく、俺がこの惨めな現状を肯定するために生み出した幻想でしかないのだろうけれど。 「助け、ッ、・・・たすけてください・・・」 奴の胸に縋り付き、ひたすらに慈悲を乞う。 すると、奴の動きが止まり、声が降ってきた。 「ちんちんはおしっこする時気持ち良いんだから、がんばればナカに入れられてるの気持ちよくなるはずだよ。がんばれっ、ほら、ちゃんと覚えて。」 ぼくは覚えたことないし、これからもしないけど、と奴は付け加えた。 「しょうがないよね、君は、ぼくよりも力で劣るのだから。これくらいは覚えようか。」 メアディスは俺の陰茎を握り、乱暴にしごき始めた。 「あ、ヒ、ぃッ、・・・!」 ゴツッ、とした感触が、俺の大事なところを内側から削る。 「アシュベル、神なんかがいるとしたら、弱い者も安楽に暮らせる神の国が実現されているはずだ。だが、現実は違う。現に君は教え込まれているだろう。弱者は存在するだけで罪だ。その身を以って贖わなくてはいけない。よって、神など存在しない。君もそう思うだろう?」 俺は、奴の言うとおりに少しでも快感を拾えるように集中しながら、奴の独り言めいた言葉を言い聞かせられていた。 何を言っているのか、わからない。わからないけれど、俺は奴の機嫌を取りたくてうなづいた。 「・・・わからないくせにわかったふりをするのが、一番ぼくの気に入らないとはわからないのか、莫迦。」 メアディスは冷たい目で俺を見て、 「せめて、気持ち良い、と言い続けろ。それぐらいしか、お前の口の使い道はない。」 と命令した。 逆らえないその声色に俺はまた何度目かの体の震えを感じる。 「・・きも、ち、いです・・・」 泣きすぎて掠れた喉から言葉を押し出すようにして、俺は鳴いた。 「きもち、いいッッ・・・!ヒギ・・・ぁ、・・・き、きもち、い・・・ッッ」 言ってるうちに本当に気持ちよくなれば良い、と、俺は半ば願うようにして、思う。 奴は満足したのか、いっそう腰を激しく振りたくる。 「あ、げ・・・ぇっ、・・き、もち、いで、・・・す」 「ふうん?・・・段々とよくなってきたのかな。」 俺にはわからないが、だんだんと俺は体に異物を馴染ませてきているようだった。 (抜いてくれ・・・っ、早く、抜いて、・・・) それだけを思いながら、俺は失神するまで犯され続けた。

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