4 / 7

第4話

昔々、あるところに、砂漠の王様がおりました。 王様は、国の村という村から美少女美少年を徴用してきてはこれを侍らせて愛でるのですが、しかし、三日と経たずに飽いては、その者たちを処刑してしまう、大変暴虐な王様なのでした。 さて、今宵も王様の夜伽の相手は、例の褐色の肌に銀の髪をした、しなやかな手足の、賢く、お話の上手な少年です。この少年は、昨夜もその前の日も、その前の日も、王様のお相手をさせられたのでした。 夜伽も終わり王様は、すっかりおなじみとなった寝物語をするよう、少年に命じました。 少年は王様に申し上げました。 「承知いたしました。王様がそのように望まれるのであれば、願いをかなえるのは四度目となりますが、寝物語をいたしましょう。」 「うむ、よろしく頼むぞ」と王様は仰られました。 「そなたの物語が尽きるとき、そなたの命はないものと思うがいい。」 こうしてわたくし、月が見ているその下で、今夜も不思議の物語の幕が開いたのです。 昔々、獣と人間の別がまだそれほどはっきりしていなかった頃のお話です。 あるところに、悪魔のような人間がいました。 その頃の人間たちは、獣でありながら人間のように二本足で立ち、言葉を話す獣人たちを自分たちよりも力の強さでは勝るが頭の良さでは劣るとして奴隷として使うのが常でしたが、この人間の奴隷の扱い方は過酷で、かつ悪趣味でありました。 人間は、ある土地の領主でした。領主の住む土地には、良質の金が取れる鉱山がありました。領主は、そこで獣人たちを死ぬまで働かせて、死ぬ直前になると、その奴隷たちに自由を言い渡し、森へ放って、あとから犬に追わせて、奴隷狩りを楽しむなど、悪逆の限りを尽くしたのでした。 ある獣人は、その体躯の良さを見込まれ、領主の悪趣味な遊びに付き合わされました。領主は、獣人には人並みの羞恥心やプライドが存在すると知りながら、獣のように獣人を扱い、ただただ犯すのみには飽き足らず、 手を遣わずに食事させたり、人前で排泄をさせたり、その他にも恥辱になるようなことならば、なんでもさせました。 どうして獣人がそのようなことをされても逆らわなかったかといいますと、獣人たちは、魔法のかかった首輪が嵌められていたからでした。その首輪は、術を掛けた者に掛けられた者が危害を加えようとすれば、たちまち電流を流して処罰する、まさに悪魔の首輪だったのです。 ある時、領主が子供を産ませました。 子供は、獣人たちは人間にも畜生にも劣るものなのだと、その知性は、ただただ人間が踏みにじって遊ぶものなのだと、父親から学び取って成長しました。 ある日のことです。いつものように、領主の息子はあの、若い頃、領主に目を付けられていた獣人の首輪に綱を結わえ付けて、領内を散歩しておりました。 領主の息子は、犬を可愛がる主人のような気持ちも、その獣人に対して持っておりましたので、食べていた氷菓子が自分の靴の上へ落ちると、その靴を、四つん這いにさせて足元に侍らせているいる獣人に舐めさせてやるといったような面も持っておりましたが、無論それが獣人にとっては、慈悲どころか屈辱以外の何者でもなかったことは言うまでもありますまい。 「ああ、少し疲れたな。」と、領主の若さまが言いますと、獣人は、いつもの忠義めいた調子で答えるのでした。 「坊ちゃん、あちらに小屋がございます。あそこで休まれてはいかがでしょうか。」 「うん、そうしよう。」と若さまは、その小屋へ入っていきました。 するとどうでしょう、その小屋の中には、若さまが見たことのないほど汚く、嗅いだことのないほど臭う獣人たちが犇(ひしめ)き合っているではありませんか。 「え…?なに、これ…」 本能的に危険を感じて、あとずさる若さまの肩をがちりと掴んだ手は、いつも付き従っているあの獣人でした。 「坊ちゃん、そういえば、わたくしめに坊ちゃんのお父上がされたことの話は、しておりませんでしたでしょうか。」 獣人は、慇懃な態度で、しかし若さまの肩を痛いほど掴んで、あの、首輪に電流を送る魔法の呪符を取り上げてしまい、にやにや笑いを浮かべています。 「ここにみんなが、坊ちゃんの父上にオモチャにされて、いつか捨て身になってもいいから復讐してやりたいとずっと考えていた、この屋敷の奴隷たちです。これから、俺たちがされてきたこと全部坊ちゃんにしますけど。今から坊ちゃんが経験したこともないような目に遭うことになりますけど、大丈夫、死にやしませんよ、俺たちもこうして生きているんですからね。」 と言うと、獣人は、丁寧だった言葉を崩して、初めて若さまに牙を見せて、笑いました。 「ああ、いつもこの日を、俺は待ちわびていたんだ。坊ちゃん、泣けど叫べど助けはこねぇぜ、観念するんだな。」 それから若さまは、昼も夜もわからなくなるまで、獣人たちの荒々しい体で、なぶられ続けました。 獣人たちは、力も強く、また、男根も人間並みではないのです。若さまは雄に抱かれるのは初めてでしたから、散々泣き叫びましたが、やがて声さえ枯れ果てました。 ぼろぼろになった若さまを、まだまだ獣人たちは虐め続けます。 少しでも奉仕をためらえば、容赦のない鞭と怒号が飛び、喰ってしまおうかと脅されます。若さまは今や、後ろから犯されて前で口での奉仕をさせられながら、目に一杯の涙をためていました。 (僕はいままで、あの獣人によくしてやったつもりでいたのに、そのお返しがこんな仕打ちだなんて。) 若さまは思いました。そして、この暴虐から逃れた暁には、必ず、このならず者たちを成敗しなくてはいけないと考えました。 ですが、いつまでもいつまでも、この復讐の宴は続き、若さまは最初の威勢など忘れて、次第にごめんなさいと口にして、獣人たちの機嫌を伺い始めました。 「オラッ、‼俺たちに媚びて見せろや!俺たちは、この後館にいるご主人に処分されちまうだろうからなぁ、冥途の土産にお前の媚び顔でも拝んどかなきゃ、やってられないぜ。」 「っああ、お願いです♥乱暴にしないでください優しくしてください♥」 若さまが精一杯に体をくねらせ、淫靡な表情を作って媚びて見せると、獣人たちはますます猛り狂いました。そうして、若さまは二度と女の前で服を脱げないような、乳首の大きいアナルローズのはみ出たひどい淫乱メスの体にされ、脳みそも洗脳が完了して、一晩にして乱暴される以外では何も感じられない絶望的な心身にされてしまいました。 一晩でそこまで行ってしまうのは、若さまの素質によるところも大きいのでしょう。が、勿論、領主は怒り狂い、実行犯の獣人たちを処刑しました。茨のように棘のついた針金で手足を処刑台に括り付けて、瞼を切り取るところから始めて、出来るだけ死なさずに苦しめながら頭の皮を剝ぎ、内臓を刳り抜いて、手足をつぶし、最後は大きな丸太の先端を尖らせて串刺しにして、凌遅刑に処しました。 しかし、あの獣人だけは、手足こそ落とされはしたものの、命だけは無事でした。若さまたってのお願いで、生かされることとなったのです。 暫くして、領主は謎の死を遂げました。料理に、誰が盛ったか猛毒が入っていて、胸を搔きむしりながら苦しんで死んだのです。 そうして領主になった若さまは聡明で、獣人にも人間たちにも優しく、徳のある領主となり、皆から慕われました。 しかし、若さま、いいえ、現領主様には、お世継ぎを作られないことの他に、もう一つ不思議な点がありました。 月の出ない晩、人目を忍んで、領主様は、野原の先の小屋へ入るのです。 そこは、かつて領主様が獣人たちに輪姦された小屋でした。 今は、そこにはかつてあの獣人だった肉の塊が、舌を抜かれ、手足を捥がれて、薬漬けにされてうごめいていました。 「今夜も来てしまいました♥」領主様は、もどかしげにすら見える様子で服を脱ぎながら、言いました。 「あなたが、あなたが僕をこういう体にしたのだから、今夜も一晩中お相手をしてくれないと困ります♥そう、あなたが、僕に支配される悦び、奉仕の喜びを教えてくれたのだから…♥」 薬漬けになった体はしかし、今だ正気を保っている獣人を絶望させるほどによく似素直なのでした。領主様が獣人の股間を少しすりすり♥と撫でただけで、領主様から逃げようとすらもがいている獣人のからだなのに、彼のそれは反応して立ち上がってしまうのでした。 (嫌だ、いやだいやだ、こんなことになるなら、仲間と一緒に処刑された方がましだった…!) 獣人はもがきますが、領主様はその体をがっちりつかむと、その中心を飲み込むようにして、獣人の体に裸の腰を落としていきます。 「あなたには感謝しているんですよ♥あの出来事がなかったら、僕は傲慢な少年のまま、領主になっていた。あの出来事があったから、本当に苦痛の中にいる人間に同情でき、聡明な君主様だなどとだと言われるのです♥…もうあなたを苦しめたあの人間は消してあげたのに、なぜそんなに泣くのですか…?あの時散々僕を貪ったくせに。嬉しいでしょう?好きなだけしてあげます♥ねぇ、僕を捨てないで♥まだまだ僕を見て♥」 獣人の上で腰をくねらせながら領主様は言うのでしたが、自由を奪われ領主様の性の玩具とされるばかりの獣人は、潰された喉ですすり泣くのみでした。 少年はそこまで語ると口を閉じ、蒼の瞳でうやうやしく王様を見ました。 少年の流れるような、そして淫靡な物語の余韻に浸っていた王様は、しばしの沈黙の後言われました。 「なるほどのう。古き領主もその奴隷であった獣人たちも、憤怒のあまりにその運命を狂わせて、悲惨な死を迎えたのだな。」 「左様にございましょう。」 少年は、静かな声で相槌を打ちました。 「だが、人の心とはわからぬものよ、移ろいやすきものよ。新しき領主は、いったいどのようにその心を壊され、捻じ曲げられていったものやら。…余も、人間の心がかように移ろいやすきものでなければ、このように夜伽の相手を夜な夜な手に掛けることもなかったであろうに。…世の中の、ままならぬことよ。」と、王様は珍しく饒舌に、その美しい白皙の顔を歪めながら、心中をお漏らしになられました。 そうして王様は、今夜も少年に命じられました。 「明日の夜もまた、夜伽に参るがいい。そして、余にまた不思議な話を聞かせるのだ、よいな。来ないのであれば、そうだ、そなたを、物語に出てきたような刑に処すのもよかろう。」 「承知致しました。」 少年は、恐ろしい王様のお言葉に恐れる風もなく言い残し、王様のお休みの邪魔にならぬよう、いつも通り早々に下がるのでした。 少年は、明日の夜はいったいどのような話をするのでしょうか。 王様が恐らくそうであるように、わたくしもまた、明日の夜が待ち遠しいような、恐ろしいような気持ちになりながら、眠りに着いたのでございます。

ともだちにシェアしよう!