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旅館では久遠と碧斗、王寺と一樹とで、それぞれ部屋をとっていた。
二つ並べられた布団の片方に二人で入るという、どうにもなまめかしいシチュエーションも手伝っているのだろうか。珍しく積極的に求められている気がする。
太腿に手を置かれ、たっぷりと味わうような愛撫を臀部にも受けて、火照るような重量感が碧斗を襲っている。
「肌がしっとりしてきてる。分かる?」
脳梁に染み入るような色気ある声に、甘苦しい疼きがさらに強まった。碧斗は瞑目して頷いた。
唇を深くかませあい、すぐに情動を昂らせたキスは口許で水音を弾けさせる。しとった吐息が幾重にもすり抜けた。
(感じないはずなのに)
なんでこんなに気持ちがいいのだろう。
怖い。怖いけれど気持ちがいい。
キスによる気の昂ぶりで興起を始めた碧斗の前のものに、久遠が触れた。
「感じてる」
唇を離さずに、感じ入ったように久遠が呟く。恥ずかしさにかっと頬が熱くなった碧斗は、膝をこすり合わせるようにしてそれを隠そうとした。しかし久遠の手は浴衣のあわせを開き、碧斗の恥ずかしいものを難なく取り出してしまう。
先端に執拗な刺激をくだされ、快楽に負けた蜜口が歓喜の涙をぽつぽつと流し始める。
それをいたわるように傘に塗り付けられれば、ぬめぬめとした感覚がたまらない。
「ここは、どう?」
久遠がくびれをさする。鋭い感覚に碧斗の肢体が跳ねた。そこは、とても弱い。
強弱緩急を織り交ぜて刺激を与えられれば、背骨に熱い電流が幾重にも走って、碧斗は背中を小刻みに震わせねばならなくなる。
困るほどの快楽だ。
ちゅくちゅくと音までさせて執拗になぶられれば、爛れて、痒いような痺れが腰全体に勃興する。
快楽は心地よいばかりじゃない。つらくて、切ない。
疼く蠢動は碧斗の性器を張りつめさせ、さらに泣かせる。
碧斗自身も声にならない叫びをあげ、呼吸を乱した。
硬直した久遠のものも浴衣を押しあげ、前合わせから飛び出ている。碧斗はおそるおそる手を伸ばしてそれを握った。固い筋肉の肢体に似合い、嵩高で、筋や血管が浮きでている立派なものだ。
久遠を真似て愛撫してみると、その昂ぶりも涙を流すように液体を湛え始める。同じように塗り付け、なめらかに愛撫した。久遠にされるのと同じように刺激し、くびれをこすった。
「そうだ。とても気持ちがいい」
久遠の気息もかすかに震えだす。互いに互いを絶頂へ導く、その儀式の始まりだった。
碧斗の脚の付け根の間にできた塊は、暴れて今にも爆発しそうだ。碧斗はたまらなくなって何度も腰を前後にゆすった。
不意に、久遠が碧斗のそれを口に含む。熱い粘膜にねっとりとくるまれ、たちまち失神しそうな快感に襲われて、碧斗は全身を痙攣させる。
碧斗も上から久遠にまたがる形をとり、久遠の陽物を口に含んだ。
久遠は少し驚いたようだったが、すぐに碧斗の要望を理解して、自らは碧斗への奉仕を下から続け、自分のものを碧斗の口に委ねる。
久遠を求めてはしたない格好になったことに、碧斗は自分で興奮した。頭を大きくあげさげし、腰も激しく前後に揺さぶりながら、ぐちゅぐちゅと音をたてる。互いの口元がたてるその卑猥な水音に夢中になって、いやらしい吐息を碧斗は撒き散らした。
碧斗の大殿筋はぴくぴくと痙攣し、性欲の度合いを露わにする。
久遠の口内を犯し、逆にその怒張を口に受け止め、上体を上下させるまでして夢中でしごく。それに合わせるようにして久遠も腰を遣い、口ではいいように碧斗を責めたてる。碧斗は必死に悦楽を貪った。不感症だった己の肉体とは考えられないほどの感じ方だった。
恥骨の奥が、快感に鋭く痛み始めた。
(もう、出そうだ――――!)
一つ、大きく背中を歪めて碧斗は精を放った。それを久遠が飲み込む。碧斗の口にも精が吐き出され、碧斗も心一杯に嚥下する。
これで互いが互いのものになった気がする。互いが本当に一つになったような気がする。
じゅるっと拳で口許を拭って、あがった息のまま態勢を戻すと、腕をとられてかかえ込まれ、強く抱きしめられた。きつく腕を回されて、肌と肌がぴたりと合わさる。
《今日は、入れてくれる?》
碧斗はねだる。
「また、今度。碧斗がつらくならないようなら」
久遠は今回も、思慮深げな返答をする。
今夜は久遠もいつもより興奮していたようだったので、おおかた入れてもらえると期待していたのに…と、碧斗は内心でしょげ返る。
自分の欲望よりも碧斗の身を率先して考慮くれるのは、ありがたいし、何より久遠のやさしさだ。けれども、それを続けてばかりいられては、やはり寂しい。
《むりやり奪ってくれてかまわないのに》
もともと少ない自信をますます喪失しかけながら訴えると、久遠が困ったように笑う。
「そのうちイヤというほど抱かれることになる。本当はきみが欲しくて仕方ないんだ。碧斗が俺を無理せずに受け入れられるようになったら、いっぱい抱く。これでもかと抱く」
ならば今すぐそうして欲しいのに。
久遠のやさしい配慮を思い興し、さらにねだる言葉をなんとか碧斗は胸にしまい込んだ。
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