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第5話
「桐江さん!!」
連絡してから二十分程経っただろうか。顔を上げると焦がれた相手がそこにいた。髪が乱れ息も上がっていて、頬も少し汗ばんでいる。Tシャツにスラックスというラフな格好で現れたのは自転車に乗った鷹村だった。
「鷹村、」
「すみません遅くなって…って、桐江さん!?」
駆け寄ってきた鷹村に俺は迷わず抱き着いた。広い胸に顔を埋めると、風呂上がりというのは本当だったようで石鹸の匂いがした。それからバクバクと徐々に早くなっていく鼓動に気付いて思わず笑ってしまった。
「ふっ、凄い音」
「……勘弁して下さい」
好きだと自覚した途端、欠けていた心のピースが埋まったみたいにすとんと落ち着いた。
「その…桐江さん、そろそろ離れてもらわないと俺…」
「…ごめん」
「あ、えっと、嫌とかじゃなくて!とにかくまずは帰りましょう!すみません、チャリしかなくて乗り心地悪いと思うんですけど…」
改めて鷹村の顔を見ると耳まで真っ赤になっていてわかりやすく目が泳いでいる。促されるまま自転車の後ろに乗った。
「桐江さんちまで送りますね」
「…鷹村」
「はい」
ゆっくり自転車が走り出すと、落ちないように鷹村の腰に腕を回した。今日はこのまま鷹村と一緒にいたい、なんて我儘だろうか。
「一緒に居たい」
「え!?俺も一緒に居たいですけど、ご両親が心配するんじゃ…」
「…ダメ?」
自分に惚れている鷹村なら絶対に良いと言ってくれるとわかっていて、わざと甘えるように言ってみせる。今日くらい許してほしい。
「ッ、ダメ…じゃないです…」
今の俺は多分、どうかしてる。
✳︎ ✳︎ ✳︎
鷹村の家に着くと御両親に許可をとって鷹村の部屋で泊まらせてもらう事になった。自分の両親には友人の家に泊まると連絡を入れ、漸く二人きりになる。突然来たというのに、部屋は片付いていて掃除も行き届いているようだった。机の上には勉強をしていた形跡があり、ノートに書かれた字は凄く綺麗だった。
俺が物珍しそうに部屋を見て回っていると、鷹村が居心地悪そうに口を開いた。
「えと…何か飲みます?俺持って来ますよ」
「…いや、いい」
出て行こうとする鷹村の腕を掴み、ベッドに座るように促した。
「桐江さん?」
鷹村の足の間に膝を付いて、そのまま肩に手を置く。俺を見上げる鷹村は凄く新鮮で、高揚感に満たされた。体が熱くて自分の物じゃないみたいだ。熱に浮かされているみたいで、体が言う事を聞かない。
「ちょ、大丈夫ですか…?」
そっと体を押すと、意外にも簡単に後ろに倒れた。相手が俺だから気を抜いていたのかもしれない。馬乗りになるように乗っても、鷹村は逃げ出そうとはせず俺の腕に手を添えている。
「…熱いんだ…っ」
縋るように鷹村のシャツを握り締める。どうしてもこの熱の吐き出し方が分からなかった。
「…ちょっと失礼します」
「ん…っ」
鷹村の手がそっと頬に触れる。冷たくて大きい手が熱を解かしていくみたいに頬から首筋へ落ちていく。けれど熱は収まるどころか触れられた所から余計に熱が増しているような気がして、逃れるように無意識に身を捩った。
「桐江さん…大丈夫です。俺がすぐ楽にしてあげます」
鷹村はそう言うと、今度は俺をベッドに寝かせた。見下ろす鷹村の表情はどこか緊張しているようだった。
「…力抜いて、楽にしてて下さい」
「あ…ッ」
鷹村の手が腹部を撫で、流れるようにスラックスの前を寛げた。抵抗する力も無いまま脱がされると、下腹部で張り詰めている物が丸分かりだ。躊躇わず鷹村の手がそこに触れると、反射的に腰が引けた。
「…ぁ、そこは…っ」
「大丈夫です。気持ち良い事しかしないですから」
他人は勿論、自分ですら風呂の時以外で滅多に触れた事がない場所だった。スラックスが両の足から抜かれ無造作に床に落ちる。俺の足の間を陣取った鷹村に膝裏を抱えられ大きく足を開く形になる。下着越しに指でなぞられると肌が粟立つような感覚に思わず下唇を噛んだ。
「噛んじゃダメですよ」
鷹村の親指が制すように唇を優しく撫でる。低い声がやけに甘ったるく響いて腹の奥が疼いた。
「鷹村…?」
徐に体を屈め鷹村の顔が下腹部に下りていく。下着を下ろされ先走りが糸を引くそこを一心に見られ俺は咄嗟に鷹村の目を塞ごうとする。しかし鷹村は気にも留めない様子で俺の手を取ると軽いキスをして見せた。
「ゃだ、見ないでくれ…」
「見たいです。先輩の全部見せて下さい」
「――ひィッ…ぅあッ…!?」
見せ付けるように舌先を伸ばした鷹村は、あろう事か陰茎をぱっくりと咥えてしまった。熱くてぬるりとした舌の感覚は未知のもので思わず悲鳴が漏れる。
「ぁ…んっ……は…っあ」
根元まで咥えられ、まるで愛でるように柔い刺激を断続的に与えられると堪らなくて、もっととせがむ様に無意識に腰が動いてしまう。
「ふ、ぁ……きもち、うぅあ゛ッ!?」
それに気を良くしたらしい鷹村は腰が動けぬよう固定し一層深く咥え込むと更なる責め苦を開始した。ずろろ…と酷く卑猥な水音が響いてそこを強く吸われ、かと思えば扱くように頭が上下に動いて裏筋から先端へと弱い部分を執拗に責められる。極め付けに鈴口を舌先でくすぐられると先走りが絶え間なく溢れた。
「〜〜ぁ゛!だ、め…ひぅッ、も…そこ…っでちゃ…から…ぁ!」
「…良いですよ。出して下さい」
ふるふると震えるそこに熱い吐息がかかる。ガクガクと太腿が震えて、縋る様に鷹村の髪に指を絡ませた。再度根元まで咥えられ、一際強く吸われると呆気なく鷹村の口内に欲を吐き出してしまう。
「〜〜ッ!……はっ…ぁん」
ぢゅる、と最後の一滴まで余す事なく吸って当然のようにそれを飲み込んだ鷹村が快楽で滲んだ瞳に映る。長い余韻と初めての強制的な絶頂は俺にとってあまりに強烈でドッと疲労に襲われた。
「…大丈夫です。このまま眠って良いですよ」
大きな手が頬を撫で、次第に意識が遠のいていく。鷹村に背を支えられて横に寝かされるとあっという間に深い眠りについてしまった。
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