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02.異世界転生
『地球からの迷い子か。おぉ! 18歳とは何と不憫な』
白い光が喋ってる。やっぱこれって神様なのかな?
『仲里 優太 君ね。良い名じゃな』
「どっ、どうも」
『ほれ。引きなされ』
何を? 俺の目には何も見えない。恐る恐る手を伸ばしてみると、平たい感触が。手を這わせてみると穴がある。中に手を入れると何かに触れた。これは……紙か?
『安心せい。お前さんが次に向かうのは元いた国に似たニホンといったか? それにかなり近い世界じゃ』
「あの……質問いいですか?」
『良かろう』
「俺ってその……やっぱ死んじゃったんですかね?」
『まぁ、そうじゃな』
「っ、母さんや、父さんは――」
『振り返るでない』
「えっ?」
『いくら悔いたところで、お前さんにはもうどうすることも出来んのじゃからな』
「でも、貴方サマになら?」
『何? ほっほっほ、可愛い顔して中々豪胆じゃのぉ~』
「すっ、すみません」
『良いぞ』
「へっ?」
『其方 の両親に、ほんの少しだけ施しを与えてやろう。其方がその生き様で、この儂 を満足させることが出来たらの』
ありがたい! けど、何だその無茶振り。神様の満足のいく生き様って何だよ。偉人になるとかか?
『特別なことはせんでええ。お前さんなりに精一杯励むことじゃ。元々そのつもりだったんじゃろ?』
「えっ……?」
お見通しってわけか。すげぇ。やっぱこの人は神様なのかもしれない。
『ほれほれっ、そうと決まればさっさと』
「はっ、はい!」
俺は促されるままくじを選びにかかった。よし。これにしよう。箱の中からくじを取り出す。案の定、俺の目には何も見えなかった。
『どれどれ』
手から紙が抜けていくような感覚がした。何が書いてあるんだろう? やっぱスキルとかかな?
『おぉ! 『妖力供給』か! ほっほっほ! 大当たりじゃ! 良かったの~』
「それってつまり、魔力的な力を誰かに分けることが出来るってことですか?」
『左様。ただし』
「たっ、ただし……?」
『妖力は胸から出る!』
「……………はい?」
『妖力は胸から出る!!』
「…………あの……」
『むうぅうう!!? まったく物分かりが悪いのぉ。良いか? 胸を吸わせれば良いのじゃ、胸を。乳首を口に含ませてちゅーーっとな。まさに母が子に乳を与えるが如く――』
「あのっ!!!」
『何じゃっ!!!』
「俺ッ!! その……男ッッ!!! なんですけど?」
『男色を相手にすれば良かろう』
「っ!? そっ、それってゲイってことですよね? 勘弁してくださいよ!!!」
『騒ぐな騒ぐな。男と一口に言っても様々。女子 にも劣らぬ美貌を持つ者もおるではないか』
「そりゃっ……まぁ、そうなのかもしれませんけど……」
『妖狐なんてどうじゃ? あれは中々の美形揃いぞ』
「妖怪じゃないです、か――っ!!??」
体が傾いた。何の前触れもなく突然に。足場が……ない!?
「うわあぁぁああ!!!???」
『頑張るんじゃぞ~』
「ちょっ、まっ、~~~かっ、神様~~~~~~!!!!」
体は勝手に大の字に。内臓が押し上げられていく。ヤバい。吐きそう。
「ぐっ……もっ、森……か?」
真っ暗で何も見えない。遠くの……山の上? あの辺りだけは妙に明るい。よく見たら山頂に建物がある。あれは城か? 瓦屋根の上に金色のしゃちほこが乗ってる。典型的な和風建築。神様が言った通り日本風の世界みたいだ。
「で、でも、だから何だってンだよ~~~!!!」
環境◎だったとしても、死んじゃったら何の意味もない。くそっ! もうどうにもならないのか!? 貰ったスキルは『妖力供給』。この状況を打開出来るとは到底思えない。身体能力が上がってることに賭けるしかないか。
「んぐぐっ! うおぉおおおおおお!!!」
地面が近付いてくる。目は開けていられなかった。閉じた瞬間、ぴたりと止まる。
「ん……っ!?」
目を開けると宙に浮いていた。目算2メートルぐらいか。
「これって俺の力……? おわっ!?」
落ちた。くそっ。デコ打った。痛い。痛すぎる。うう゛っ、涙出てきた。
「何奴!!!」
ガチャガチャと金属がぶつかり合うような音がする。涙で歪んだ視界の中、目を凝らして音の出所を探った。
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