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13.約束

「はぁ……っ、はぁ……ここが頂上、か?」  目の前には原っぱが広がっている。何もないかと思いきや、片隅には小さな小屋が。もしかして、あの中か? 「リカさん? すみません、優太(ゆうた)です」  (すだれ)を押して中を覗く。日影にあるせいかどうにも薄暗い。小屋の5分の2が土間で、その先はフローリングか。真ん中にあるのは囲炉裏かな――。 「っ!? リカさん!」  囲炉裏の脇にリカさんの姿を捉える。俺は大慌てでローファーを脱ぎ捨てて土間の上へ。 「しっかりしてください! リカさん!!」  リカさんは眠ってた。紺色の布団に包まるような恰好で。 「……ゆう、た……?」  リカさんの顔は真っ青だった。生気をまるで感じない。 「……っ」  背筋が凍る。リカさんが死ぬ。マジでそんな気がした。俺は居ても立っても居られず、自分の着物の(えり)を力任せに開いた。 「飲んでください」 「ありがとう。でも、この前もらったばかりだから」 「……っ」  イライラする。こんなボロボロなのに、それでもアンタは。 「(ないがし)ろに、しないでもらえますか?」 「え?」 「俺達の気持ちを。~~っ、俺らだってリカさんのことを思ってる。大好きで、大切で、失いたくないんですよ」 「優太……」 「っ、お願いです。信じてください」  何かが零れ落ちた。涙だ。慌てて拭うと、ぐっと腕を掴まれた。リカさんだ。困り顔かと思いきや、何処か(くすぐ)ったそうに笑っていて。 「ありがとう」 「お礼はいいから約束してください」 「約束?」 「これからは1人で抱え込んだりしない。困った時は、ちゃんと俺や里のみんなを頼るって」 「分かった。約束するよ」 「っ!」  やった! まずは一歩。泣き落としにはなっちゃったけど……まぁ、良しとしよう。 「じゃあ、早速お願いしてもいいかな?」 「勿論です。あっ……」  腕を引かれた。息を呑みつつ身を委ねると、ゆっくりと布団の上に寝かされる。見上げれば天井を背にしたリカさんの姿が。 「ん?」 「~~っ!!!」  目が合うなり、俺の顔はかぁーーっと熱くなった。っていうか、これ今更だけどヤバくないか? 布団の上で乳首を、なんて。これじゃまるで……っ。 「帯、外すね」 「はっ……はい……」  返事をした。酷くか細い声で。さっきまでの威勢は何処へやらだ。 「っ!」  しゅるっとやらしい音を立てて紺色の帯を解いていく。押さえを失った俺の着物は、左右に分かれてはらりと落ちていった。  死ぬほど恥ずかしい! なんて思ってたのに……気付けば俺の目は、リカさんの(はだ)けた胸元に釘付けになっていた。広い肩、広い胸、脇腹は綺麗な曲線を描いていて、その終着点である腰はきゅっと締まっていた。 「……っ」  カッコイイ。素直に憧れる。けど、たぶん……それだけじゃなくて。 「ふふっ、何を見てるの?」 「っ! いっ、いえ! ただその……っ、ぼーっとしてただけです!」 「ふ~ん?」  バレてる? けど、満更でもない……? 自慢の体だから? それとも……~~っ、バカ!! これは恩返しだ。余計なことは考えるな!! 「いただくね」 「……はい」  俺はそう返事をしつつ自分の右拳を唇へ。ついでに、リカさんから視線を外した。見ないようにすれば少しはマシか。 「あっ……!」  来た。触れてる。リカさんの熱くてしっとりとした舌が。

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